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天体望遠鏡用H60mmアイピース

File No.010

 中学生の時に、いつか天体望遠鏡を自作したいと思って購入した『天体望遠鏡製作ハンドブック』(川村幹夫・著/誠文堂新光社)は、天体望遠鏡に限らず、いろいろな工作にも役に立つ実用性の高い本だった。結局、ポータブル赤道儀を作っただけで天体望遠鏡の自作は実現しなかったが、この本の中に載っていたハイゲン式アイピース(接眼鏡)の合成焦点距離の計算式を元にして高校生の時に作ったのが、H(ハイゲン)60mmアイピースだ。
 天体望遠鏡のアイピースには、ほかにケルナー、オルソスコピック、ミッテンズエー・ハイゲンなどの光学系があり、その焦点距離によって倍率が変わる。近年はまた状況が変わっていると思うが、当時、市販されているアイピースの焦点距離は4〜40mmだった。倍率は対物レンズや主鏡の焦点距離をアイピースの焦点距離で割ると算出されるから、つまりアイピースの焦点距離が長いと低倍率となる。そこで思いっきり低倍率のアイピースを自作してみようと思いたったのだ。
 2枚玉レンズを使用するケルナーやオルソスコピックのアイピースを自作するのは無理。そこでレンズ構成が簡単なハイゲンを選んだ。問題のレンズは、当時、天体望遠鏡自作派の御用達だったダウエル光学こと成東商会に2枚注文した。レンズはすぐに届いたが、注文したレンズが1枚品切れとのことで、焦点距離の近いレンズが代わりに入っていた。コーティングもしていないので、値段も安かったように思うが、とりあえずそれを手持ちの材料で組み立ててみた。鏡筒部分はコダックのフィルムケース、接眼部にはニコンのカメラ用接眼目当てを装着。レンズはプラスチックの筒などを利用して固定したように思う。最後にメーカー製のケルナー40mm用のアダプターリングを利用して天体望遠鏡に取り付けられるようにした。
 こうして、何とも簡単にできてしまったH60mmアイピースが下の写真。実家の屋根裏部屋に保管していたのを今年の正月に出してきて撮影した。肝心の画像だが、視野は狭いものの計算通りの低倍率で、それなりに楽しめた。成東商会のレンズや鏡は、評価が低かったが、単純なレンズ構成だったから、あまり粗が目立たなかったのかもしれない。なお、以前の記事で曖昧な記憶のまま、とりあえず焦点距離を100mmとしたが、最近、実家で当時のノートを発掘して正確な焦点距離が判明したので、訂正しておきたい。思っていたより短かったけど、どちらにしても希有な最長焦点距離のアイピースだったのは間違いないし、天体望遠鏡やポータブル赤道儀を自作した人はたくさんいると思うが、アイピースを自作した経験のある人はそんなにいないだろう。

自作した天体望遠鏡用H60mmアイピース(左)と、その断面図(右)
f1=3×f2   d=(f1f2)/2   合成焦点距離f1×f2/(f1f2)=f1/2