<<前のページ | 次のページ>>

カタカナ地名の由来 御坂山地・ジョーリヌキデイラ

撮影年月日:1998年5月27日

 山岳地の地図を見ていると、時々、カタカナで表記された地名があることに気づく。奥穂高岳のジャンダルム(フランス語)のように近代になって命名された地名を除けば、主に次の場合が考えられるが、中には「本当に日本語なのかな」と思わずにいられない変な地名もある。

@方言の呼び方のままにカタカナ表記にした地名。例えば、山梨県の御坂山地には、ジョーリヌキデイラという場所がある。これって、どういう意味なんだろうとずっと思っていたのだが、以前、この話を山梨県出身の友人に話したところ、「〜平(だいら)のことを、地元では訛ってデイラっていう」といわれ、ようやくピンときた。おそらく「草履脱ぎ平(ぞうりぬぎだいら)」が訛った地名なんだろう。
Aオノマトペア(擬音語)に由来する地名。例えば、谷川連峰には、滝が流れ落ちる音に由来するドウドウセンという名前の滝がある。
Bアイヌ語や朝鮮語など、日本語以外の言語に由来する地名。アイヌ語由来とされる地名は北海道ばかりでなく、東北地方から中部地方にかけて広く見られる。例えば、奥鬼怒のオロオソロシの滝は、一説にはアイヌ語ともいわれる。

■かつて私が調べた地名の中から、おもしろいカタカナ地名の例をいくつか取り上げてみよう。

・ウジウジ峠(京都府)・オゾウゾ山(岐阜県)・オッパングエ(奈良県)・オロン岳(長崎県)・カモエダズンネ(新潟県)・キューハ沢(神奈川県)・クラガリヌ(奈良県)・クルソン岩(広島県)・ケチャグラ沢(宮城県)・ゴトメキ(山梨県)・コリトリ(徳島県)・ゴロゴロ岳(兵庫県)・サンボトジ頭(岩手県)・ジトンジ岳(鹿児島県)・ジャガラモガラ(山形県)・セイメイバン(山梨県)・ゾウゾウ山(岐阜県)・ソッケ森(秋田県)・ソンボ山(岐阜県)・高ドッキョー(山梨-静岡県)・タッチラ坂(山形-秋田県)・タラタラノセン(群馬県)・チーゴ岳(大分県)・チョーナ岩(熊本県)・ニコニコ滝(奈良-三重県)・ニュウ(長野県)・ヌカザス山(東京都)・ネコブ山(新潟県)・ヒョングリ滝(山梨県)・ビンザ森(秋田県)・ブルンベ(高知県)・フングリ乢(岡山-鳥取県)・ボサ森(山形県)・ホハレ峠(岐阜県)・ボボフダ峠(滋賀県)・ポンポン山(京都-大阪府)・メンズクメ山(岩手県)・ユーシン(神奈川県)・リンノ峰(埼玉-山梨県)など

 この中の神奈川県・丹沢山系のユーシンは、漢字では「幽神」と書き、古い地名ではなく、近代に入ってから命名されたものという。また長野県・八ヶ岳のニュウは、稲束を積んだものを「にお」と呼び、それが訛ったもの。カタカナ表記では、なんとなく謎めいて見えるが、由来がわかると、案外なんてことはない。ただ中には、本当に由来不明のものもあるようだ。かつて北海道をまわったとき、アイヌ語でも日本語でもなく由来不明と書かれた川の名前の解説板を見た記憶がある。また漢字表記になっている地名でも、朝鮮語などの外国語由来とする説もあり、富士山の語源にはマレー語説もあるそうだ。このような山名の謎を追った『富士山はなぜフジサンか』(谷 有二・著/山と渓谷社)には、興味深い話がいろいろ載っている。一読をおすすめしたい。


ここが、ジョーリヌキデイラ。なんてことはない小さな平坦地だ




 CONTENTS 
 
   
 

Nature
山岳記