Nature
山岳記
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野湯 秋田県・乳頭山

撮影年月日:2002年7月29日

 野湯というのは露天風呂のことじゃない。もっとワイルドな状態の温泉のことだ。近年、テレビ東京の紀行番組などでも何度か取り上げられたので知っている人も多いだろう。つまり山の中に石を組んだ簡単な湯船だけが作られていたりとか、そんな温泉のことだ。ほとんどは管理している人もおらず、当然入浴は無料。ただし脱衣室や洗い場もなく普通の露天風呂とは比べものにならないほど野趣満点。しかも湯船にたどり着くのも簡単じゃなかったりする。
 例えば滝壺で入浴ができる北海道・カムイワッカ湯の滝などはその最も有名な例。だが、そんな野湯というのは実は結構各地にある。私が実際に入浴したことがあるのは秋田県・乳頭山登山道の途中にある一本松温泉跡「たつこの湯」。人気の高い乳頭温泉郷から登山道を40分ほど登った場所にあり、簡単な石組みの湯船が作られているのだが、登山道のすぐ側にあるので入浴するにはちょっと勇気がいる。私の場合は早朝で登山者が誰もいなかったので、絶好の機会とばかりにさっと脱いでひとっ風呂浴びた。ただ湯船は浅く、底は泥と砂。加えてお湯はぬるい。しかも入浴しているところをほかの登山者に見られたくはないので、あまりゆっくりもできず早々に切り上げた。まぁ、そんなわけで、あまり快適でもなかった。



乳頭山の中腹にある一本松温泉跡「たつこの湯」。乳頭温泉と同じく乳白色のお湯が。



大雪山の中岳温泉。手を入れて湯加減をみると適温だった。登山者の行き来も多く入浴は難しいが、この写真を撮影した時、そばにいた男性登山者に聞くと「足湯しました」といっていた。あ、なるほどその手もあるな。しかし、この先で逆コースで下って来た若い男性登山者から中岳温泉の状況を尋ねられ、「湯も適温で浴槽も作ってありました」と答えると喜んでいた。彼は入浴するつもりのようだった。


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