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テープ印 北海道富良野市・原始ヶ原

撮影年月日:2013年7月21日

 岩に書かれたペンキ印と同様に正規の登山道であることを示す意図で登山道沿いの枝などに目立つ赤やピンクのテープが結ばれていることは多い。こうした案内+遭難防止目的のテープについて適当な呼称はないと思うので、ここでは仮に「テープ印」とした。ちなみに今から30年ほど前のことだが、当時、広島県の定番登山ガイドブックでは、「テーピング」と呼んでいた。ほかでは見たことがなく、ネット検索しても出てこないので、それが呼称として正しいのかどうか、私は知らない。

 テープ印は、道迷いを防ぐ意味でも重要で、特にわかりにくい登山道では、テープ印に助けられることも多い。ペンキ印と同様に多すぎるのは問題だが、適度な印はその登山道を管理している人がいることを伺わせ、その労に感謝したいと思わずにいられない。
 登山者で、これに異論を唱える人はほとんどいないと思うが、こうしたテープ印を勝手に取り外している人がいるらしい。九州密着の山歩き&野遊び専門誌『のぼろ2015年夏号』(西日本新聞社)には、読者から「赤テープを外したり、沢沿いにあるケルンを壊している登山者と遭遇した」という体験談が寄せられ、ほかのコースでも同じことをしているカップルに遭遇したので質問したところ、「逃げるように去って行った」「どうも組織的(山の会?)な行動のようだ」とあった。

 コース上のすべてのテープ印を取り除いたのか、テープ印が多すぎるので、一部を間引いたのかは不明だが、すべてだとすると、私はかなり違和感を覚える。本来、山というのは公共の場であり、テープ印やペンキ印は、自然発生的に生まれ、長年に渡って全国的に使われてきた登山界の知恵みたいなもの。ケルンまで壊していたことから想像すると、不必要な人工物を極力、山から排したいとの考えを抱く人物や団体なのかもしれないが、おそらく登山道の管理者でもなければ、地権者でもない人物が、勝手に「テープ印は不要」とみなして取り外すのもどうなんだろうか。

 九州のメジャーコースであっても、冬期はタイミング次第では新雪によって登山道が覆われ、場所によっては登山道がわかりにくくなる状況もあり得るのではないか。また山に慣れた人では考えられない場所で、うっかり道を外れてしまう初心者も現実にいる(かつて奥秩父で目の前で遭遇した)。そんな時にテープ印によってコースアウトしなくてすむことだってあると思うのだが…。

関連情報→本サイト山岳記「ペンキ印



富良野岳中腹に広がる原始ヶ原は、名前の通り、原始景観が今も健在の湿原で、木道すらなく、湿原の中や付近の立ち木に点々と示された印をたどって、湿原内の指示されたルートだけ歩くようになっている。この印がなければ、特にガスがかかった時に迷う人が出るのは必須と思われる。



登山道沿いの立ち木に結ばれたピンクテープ。撮影したのは、岐阜県と富山県の県境上に続く北アルプス・北ノ俣岳登山道。北アルプスの人気コースと比較すれば、登山者はかなり少ないが、登山道自体は極めて明瞭で、冬期以外に迷うことはまずないと思われる。とはいえ、やはりテープ印があることで、安心感が生まれるのは間違いない。



下草のない林の中は、道とそれ以外の林床の境が明瞭ではなく、コースアウトしやすい。そんな時にテープ印があることで、より確実にコースをたどれる。木立に点々とテープが巻かれて、コースが把握しやすいように配慮された長野県売木村・アテビ平野鳥の森。



鈴鹿山脈・御池岳山頂からコグルミ谷方面に下るコースは、メジャーコースであるにも関わらず、その入口には道標がなく、このテープ印が唯一の目印。このテープ印がなければ、迷う人が出るのは必須と思われる。

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長野県長野市・高妻山登山道。渓流徒渉地点に結ばれたテープ印。




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