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高原の秋を代表する花
マツムシソウのなかま

マツムシソウ科
Scabiosa japonica
(マツムシソウの学名)
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 マツムシソウは、山地の草原に生える2年草。北海道から九州まで広く分布し、高原ではしばし大きな群生を作る。薄紫色のさわやかな色合いの花は秋風が吹き始めた高原によく似合う。ひとつの花のように見えるが、キク科と同じ多数の小さな花が集まった頭状花序。
 普通のマツムシソウは高さ60〜80センチほどだが、広島県の山で、高さ20センチほどの草丈しかないマツムシソウを見かけたことがある。おそらく放牧地であることから、牛が一度食べたために草丈が短くなり、そのあと花芽を形成したためだろう。草丈は普通の半分くらいのミニサイズだが、花は普通の大きさだった。

 ところでマツムシソウのなかまには、高山帯に分布するタカネマツムシソウ( var. alpina )と、海岸に分布するソナレマツムシソウ( var. littoralis )、さらには愛知県に分布し、東海丘陵要素のひとつとも考えられているミカワマツムシソウ( var. breviligula )がある。
 タカネマツムシソウは高山植物としても知られているが、一方のソナレマツムシソウはあまり知られていない。「ソナレ」とは磯馴れの意味で、つまりマツムシソウが低地に適応したもの。数年ほど前、何とか見たいと思い、自生している神奈川県の海岸に探しに出かけたことがある。時期的にもちょうどよく、意外と簡単に見つけられると高をくくっていたのだが、あたりをくまなく探したのに見つけられなかった。すでにないのか、それとも見当違いの場所を探していたのか。いつか再チャレンジしたい。またミカワマツムシソウは、2005年に愛知県から報告された変種で、頭花が直径1〜2センチと小さく、舌状花は持たないか少数の短いものを持つなどの特徴がある。



長野県茅野市・八子ヶ峰の稜線に群生するマツムシソウ。



普通のマツムシソウ/長野県・入笠山(左)と、私が広島の山で見た草丈の短いマツムシソウ(中)。タカネマツムシソウ/北アルプス・八方尾根(右)。



マツムシソウの頭花(左)と長野県の八子ケ峰で見かけた白花(中)。軽い種子は、吹けば簡単に飛び散りそう(右)。



  
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植物記