| 仙谷由人氏死去報道に接して考えたこと/2018年10月18日
かつて民主党政権で官房長官も務めた仙谷由人氏が亡くなられた。尖閣の中国漁船衝突事件で中国に配慮するかのように衝突映像を非公開と決めたことなど、あまりいい印象はないが、時代の流れを感じざるを得ない。
仙石氏といえば、国会答弁で「自衛隊は暴力装置」と言ったことがやり玉に挙げられ、当時随分批判されたが、「暴力装置」というは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーが定義した社会学用語であり、国内における非合法な犯罪や他国が侵略や攻撃をしかけて来た時に対応するために、国家権力によって合法的に暴力行為が認められた警察や軍隊などの組織のことを指す。つまり、社会学的には、自衛隊は明らかに暴力装置であり、仙石氏の答弁に問題があるとはいえないが、氏の左寄り立ち位置から誤解されたのだろう。
何より注目すべきなのは、いかにも権威に近いように感じられるマスコミが、その批判にそのまま乗っかってしまったことである。彼らも「暴力装置」が単なる社会学用語に過ぎないことをまったく知らなかったか、もしくは知っていながら政権側を擁護しにくいために故意に批判したのか、いづれかだろうが、少なくともマスコミは、こうした正しい情報を国民に伝えて、世論を軌道修正することができなかったことになる。そして、そのマスコミが批判的に取り上げるのを見聞きした一般大衆も「自衛隊のことを暴力装置と呼ぶとは! 仙石はやっぱり左寄りだな」と連鎖反応的に批判したわけだ。
先日の日記に書いた件にも通じるが、世の中では、割とこういう感じでバイアスが隅々にまで広がっていくものであり、一旦こうなってしまったら、あとはもう謝罪するしかない。たとえ、発言内容は間違っていなくとも…。で、仙石氏も当時、発言を撤回して謝罪することで幕引きを計るしかなかったわけである。
現在、当時の民主党政権を評価する人はあまりいないだろうが、しかし政権を担った経験がゼロに近い政党がいきなり高得点を出せるはずもなく、「きっと民主党なら今の閉塞感を打破してくれるに違いない」とあらぬ期待を寄せてしまった国民の方もどうなのか、という話しでもある。で、実際に政権を担った民主党政権がグダグタな様子を見て、一転して批判一色になり、何をしても世論はすべてダメ出しするようになっていくわけだが、実際のところ、そのほとんどは「仙石氏の暴力装置発言は、一般の人が勘違いしているような文脈で使われたわけではなくて、単なる社会学用語に過ぎない」という冷静な報道をすることさえできなかった、実はバイアスまみれのマスコミの論調をそのまま受け入れたものに過ぎない、ともいえる。
当時の民主党批判にしろ、現在の自民党批判や安倍首相批判にしろ、すべてにバイアスがかかっているというつもりもないが、こういう事例を見れば、すべてが正しいとはとても思えない。しかも、その世論を形成しているのは、マスコミ以上にバイアスまみれの、「自分の判断はきっと正しい」と信じて疑わず、自分にとって都合がいいマスコミの論調だけ、そのまま受け入れることに何の疑問も感じないどころか、むしろ大変お得意でもある、ぶっちゃっけあまり賢くない日本国民なのである。
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