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ハエ付着パンの学校対応は問題なし/2013年10月3日

 岐阜県可児市の小学校で給食のパン表面に体長1〜2ミリのクロバネキノコバエが付着していた一件で、給食センターがハエ付着部分を取り除いて食べるように指導したことで批判されているようだ。確かに食品に虫が付着・混入するのは好ましいことではないが、この件に関していえば、やや微妙な話で、私は学校と給食センターの判断に大きな問題があるとは思わない。

 一昨日、テレビ朝日の番組を見ていたら、東京都内で教育長をしていたという人がコメンテーターとして出演して「危機意識が低い」と学校と給食センターの対応を批判していた。しかし、私はこの人にぜひお聞きしたいのだが、この場合の「危機」って一体何だろうか? ネットの意見を読むと「不衛生極まりない」とか「ハエは病原菌を持っているから危険」みたいな意見が溢れているのにも驚いた。しっかし、それにしても一般市民の意見もすごいバイアスだらけだな。あのね〜、少なくとも今回の場合は、不衛生というのはまったく当てはまらないし、これで集団食中毒が発生したかもしれない可能性はゼロである。

 その理由はちょっと考えれば、すぐにわかる。今回のパンは、焼く前に付着していたのである。仮にハエが危険な病原性細菌やウィルスを持っていたとしても、高温で焼いているのだから、それらの危険因子は確実に消滅している。児童にしてみれば気分はよくないだろうが、衛生的な問題が発生することはない。しかもパン生地をこねる時に混入したのであれば、生地内部のハエまですべて見つけられず、うっかり口にすることもあり得るかもしれないが、表面に付着しただけであれば、ざっと見るだけですべて取り除けるはずだ。うっかり食べても火を通しているのだから衛生上の問題はない。

 ハエが混入したのが、サラダとかの生ものとか、あるいは火を通したあとの料理だとしたら確かに不衛生といえるので、すべて破棄するという判断でも間違っていないと思うが、今回の場合はまったく当てはまらない。

 仮にわずか2、3個のパンに付着していただけで、学校や給食センターがすべて回収して破棄するという判断をしたとしたら、それはそれで「過剰対応」「もったいない」「子供がお腹をすかすのもかわいそう」といった批判が出たと思う。ハエが付着したパンの数が増えるに従い、人々の意見は「破棄すべき」という方に傾いていくわけだが、そのどこで一本の線を引くかというのは微妙なところ。現場の先生方も判断に迷うはずだ。給食センターの栄養士は、おそらくある程度の微生物の知識をもっているはずだから、上記の理由から取り除いて食べれば食中毒等の危険性はないという判断したのだろう。従って給食センターの判断は、十分に理解できる範囲に入っており批判するようなものではないと考える。むしろ批判している人の方こそ、パンを焼く段階で細菌やウィルスなどは死滅する(正確にいえばウィルスの場合は不活性化)という、ごく常識的な視点を見落としているわけだから、よほど物事の分析能力に問題があるといえる。

 ハエが付着しているのに気づきながら出荷したのだとしたら問題があるが、気づかなかったとしたら仕方ない。おそらく工場にとっても初めて経験する事態であり、今後、なんらかの対策をとってもらえばいいのではないか。それを「工場の衛生管理に大問題あり」「ほかのしっかりしたパン工場に発注先を変えるべき」という過剰な反応もどうなんだろうか。

 しかも体長1センチもあるニクバエなどの大型ハエならともかく、わずか1〜2ミリの微細なハエである。これほど小さなハエなら網戸もくぐり抜けるだろうし、工場のコメント通り「不可抗力」といえるだろう。それにだ。食品に虫などが混入するのを完全に防ぐことは不可能だ。

 私の過去の体験では、某コンビニチェーンの「鍋焼きうどん」のかき揚げの中にカメムシが入っていたことがある。それもかき揚げの内部ではなく、かき揚げ表面にそのままの姿できれいに揚がっていた(笑)。野菜などの食材に紛れていたのだろう。大学生の頃の話なので昔のことだが、クレームはしなかった。さすがにカメムシはちょっと論外だが、おそらく小さな虫の場合は気づかないまま食べていることもあると思う。

 これも大学生の時の体験だが、友人とともに栃木県のある山から下山して駅前のそば屋で食事した。ほぼ食べ終えて、汁の中にそばが残っていないかと箸ですくうと、なんと大きなハエ死骸が2匹も浮き上がってきた。温かいそばだったので汁はある程度は火を通してあるはずだか、そば屋では毎度毎度、一旦沸騰させてから提供しているとは思えず、実に不衛生。オエーっ、と思ったが後の祭り。

 また登山をしていると、小虫が寄ってきたのと呼吸のタイミングが重なって、うっかり虫を吸い込んでしまうことが時々ある。すぐに「ペッペッ」とはき出すが、取り出せないこともある。そういうのをゼロにするのも無理である。

 もちろん食品業界のみなさんは、人の口に入るものを作っているのだから、衛生管理だけでなく、残留農薬や食品添加物等に関しても、ぜひとも神経質になって頂きたいのはいうまでもないわけだが、私はもっと見えないところにこそ、様々な見落とされているリスクが潜んでいると想像している。具体的には、数年前にあったアフラトキシン生産カビが発生した事故米を流通させていたような事案である。それに比べればパンに小虫が付着するくらい、小さなことだ。




 
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