| イギリス・BBC番組とアヘン戦争/2011年01月24日
イギリスBBCのバラエティクイズ番組で、広島と長崎で二重被爆して、先日93歳で亡くなった男性被爆者を「世界一運が悪い男」と笑い話のように紹介したことに対して在英日本国大使館が「無神経」と番組の制作会社とBBCに抗議したそうである。それに対して、制作会社は謝罪したそうだが、BBCからはまだ返事がないとのことだ。その後の経過は知らないが、大使館の対応は当然だろう。そもそも私は世界一運が悪いとは思わないね。広島で被爆しても生き残り、さらに長崎でも死なずにすみ、しかも93歳という長寿をまっとうされたわけだから、むしろ強運の持ち主というべきだ。ついでにいえば、この番組のプロデューサーよりも長生きである確率の方が大きいのも間違いないだろう(笑)。
ところで、この話とは直接関係しないが、イギリスという国は、自らを「紳士の国」と呼び、高貴な王室を置く割には、歴史的に見ても結構えげつない国である(どの国も多かれ少なかれそういう面はあるかもしれないが)。中でも最悪だったのがアヘン戦争だろう。
アヘン戦争というのは、清との貿易不均衡を是正するという目的のために清に大量のアヘンを持ち込んで多くのアヘン中毒患者を作り出し、清が強い姿勢で臨みはじめたことに不満を持ち、いいがかりをつけて2年間に渡り清を攻撃したというものである。
こんなことをいうと、日本だって中国でアヘンを蔓延させていたという人もいらっしゃるわけだが、残念ながらその意見には賛同しない。大枠で見れば同じように見えるというだけの話であり、定量的な視点が欠落している上に細かい条件比較も行われていない。南アフリカのワールドカップで、開催前、殺人事件が多いことを危ぶむ報道があったことは記憶に新しいが、それを「南アフリカで殺人事件が発生しているかもしれないが、しかし日本でも殺人事件は起こっているわけだから同じだ」といっているに等しい。それが正しくないことはいうまでもないだろう。
本来は、どちらが中毒患者をどの程度生んだのか(中毒のレベル、患者数と死亡者数の比較)とか、そこから派生するさまざまな問題も含めての視点も必要なわけだが、とはいえ、おそらく当時、清国政府や中国政府が、きちんとした中毒患者の医学的調査をしているとは考えにくく、たとえデータが残っていても信頼性に欠ける可能性も大きい。
仮に中毒患者数が同じ、あるいは日本の方が多かったとしても、私はイギリスの方がえげつないと考える。当時のイギリスといえば、大英帝国といわれるように我が世の春を謳歌していた頃である。何ら国家の行く末が案じられるような状況にあるわけではなく、世界の富を集めていたはずだ。要は「世界に冠たる大帝国が平時の金儲け」のために他国に麻薬を売りつけ、それを拒否されると戦争を仕掛けたわけだ。ろくでもない品の悪さではないか。一方、日本は満州事変以後とはいえ戦時である。そこが根本的に違う。そもそも戦争に突入するなどして国家の命運が左右される事態に置かれると、日本に限らず、どこの国でも何でもアリになってしまうものだ。アメリカは、日本が重慶を爆撃した折、正義面して国際法違反と批判したが、その後、自分たちも同じ事を、しかも一都市どころか、多数の日本の都市を爆撃したわけだ(極めつけが2発の原爆)。また日本が中国で毒ガスを使ったことを非人道的だとして批判する人も必ずいるだろうが、アメリカは原爆のあと、本土上陸作戦では毒ガス戦を仕掛ける予定だったのである(テニアン島には、すでに大量の毒ガスが用意されていた)。
軍医だった里見甫(関東軍の息がかかった麻薬密売組織・里見機関の責任者)がどう考えていたのかまでは知らないが、当時の情勢からすれば、そういう選択をしても不思議ではない。残念ながら戦争とはそういうものである。<br>
最後にもうひとつ。現代の麻薬生産密売国・北朝鮮と比較しても、かつてイギリスがやったことの方がよほどえげつないともいえるだろう。もちろん、あくまで麻薬に関してのみの比較だが―。
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