日本の過剰に見える新型インフルエンザ対応は、おおむね正しかったという話/2010年5月2日

 国立感染症研究所が、新型インフルエンザによる国内の死者数を推計したところ、およそ200人で、多い年には1万人以上が死亡する季節性インフルエンザの数十分の1以下だったと発表した。といっても、この結果からわかるのは、必ずしも新型インフルエンザは、季節性インフルエンザよりも危険性が低いということではない。

 日本における10万人あたりの死者数を計算すると、わずか0.1人となり、アメリカの30分の一程度。これは、諸外国と比べても断然少ない。過剰対応したにも関わらず死者の割合が諸外国と同じであれば、確かに過剰対応といわざるを得ないわけだが、日本だけ圧倒的に少なかった結果を見れば、むしろ適切な対応だったと考えられる。

 その理由について専門家は、日本では手洗いやうがいなどが徹底して行われたこと、医療機関で迅速にタミフルなどによる治療が行われたこと、などを挙げている。一見すると、日本だけが過剰対応しているように見えた人もいっぱいいたと思うが、この結果からいえるのは、むしろ諸外国の方が甘かったということになる。一時、懸念されたほどの大流行にはならなかったし、もちろん反省すべき点もあるが、結局、犠牲者を世界的に見ても最低レベルに押さえ込むことに成功した。日本の過剰にも見えた対応は、おおむね正しかったといえそうである。

 本サイトでは、2009年5月28日の日記で「日本での感染が、メキシコやアメリカほど広がらなかったのは、気温や湿度などの環境要因の可能性もあるが、あるいは欧米に比べれば、やや過剰にも見える対応のおかげだったのかもしれない。どちらかというと大雑把な諸外国に対して、緻密で細かい(ある意味、神経質な)日本の国民性が、幸いしている可能性も充分にある」と指摘した。約1年たって、どうやらそれは当たっていたといえそうである。もし日本の対応がアメリカ並みであれば、約6000人は死んでいた可能性もあるのだから、安易に「騒ぎ過ぎとはいわない方がいい」という意味をご理解いただけるのではないだろうか。昨年秋の時点でも「過剰にも見えるほどの対応の結果、死者数が少なくなっている可能性」があったにもかかわらず、それを「死者数が少ないのだから過剰対応」としたのは因果(原因と結果)を取り違えている。そこを見抜けず「騒ぎ過ぎ」と結論づけてしまったマスコミの分析もかなり問題があるといわざるを得ない。

 あるブロガーが、今回の国立感染症研究所の発表に対して、同じような意見を述べた上で次のように書いていた。「(日本人は)本当に目の前に具体的な形として危機が現前すれば、凄まじい同調性を発揮して危機を乗り越えられるポテンシャルを持っていると思う」と。確かにそれはいえるかもしれない。最も顕著だったのが、先の大戦だろうが、新型インフルエンザも同じく同調性がうまく機能した例といってもよいだろう。




 

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