| 久間発言と原爆投下/2007年9月14日
「原爆投下はしょうがない」と発言した久間章生・元防衛相。今日の新聞には、その発言を久間さんが撤回しなかったということが小さく載っていた。私は広島出身で、原爆は実に許せない行為だと考えているが、この件に関していえばマスコミや世間が騒ぎすぎているという気がしている。発言の中から「原爆投下はしょうがない」という部分だけを切り取れば、確かに随分ひどい発言に聞こえるが、全体の発言を聞くと要は「原爆を落とされて、もうお手上げ。どうしようもなくなって戦争が終わったんだと認識した」というのが主旨だったのではないか。本心から原爆を容認しているとは私には思えない。
もちろん一般市民の発言ではなく、現役閣僚という立場なのだから誤解を招かないように発言には十分に注意すべきだし、この発言が不適切といわれても仕方ないとは思うが、久間さんがそういう意味でいったのではないと釈明しても、「いや、なんと言い訳しようともけしからん」「これが被爆国・日本の大臣のいうことか」という具合に、まるで火が広がるように反応していくのもどうかと思うね。「長崎選出の代議士なのに何たる発言か」ではなく「長崎の代議士だからこそ、原爆の非人道性は十分に理解されていた」と私は思う。そういう意味で使ったわけではなかったが、そういう意味にもとれる言葉をうっかり使ってしまったということだろう。もちろん大臣の発言だけにアメリカに間違ったメッセージを送りかねないし、被爆者がこの発言を不快に感じるのも当然だと思うが、久間さんが「原爆投下は断じて許せないと思っている」とあとで語っても、「もうダメ。一切聞く耳もたない。何と釈明しようとも、あなたは絶対に本心では原爆投下を容認しているのだ」と決めつけて、さらにそこから「間違った歴史認識」などという意見に飛躍したりすると、正直「何だかな〜」って思う。
批判されたあとも「私は原爆投下はやむを得なかったと考えている」といい続けているのなら、それに対して「間違った歴史認識」と批判してもいいのだが、そうではないだろう。しかも、こういう批判に対して、自分も原爆を容認していると思われたくない立場の人が、無難な「批判側」にまわって、おかしな論理におかしいと冷静に反論もしない構図が続くわけだ。
ところで、この久間発言と対照的だったのが、アメリカのジョセフ核軍縮担当特使の「原爆使用が何百万人もの日本人の命を救った」という発言に対してのマスコミや世間の反応。この発言は久間さんの発言どころではない。つまり「原爆の使用は日本人にとってもよかったのだ」といっているに等しい。この発言に対しては日本でも反発が広がったが、久間発言のときに比べて、随分マスコミはおとなしいなと感じたのは私だけだろうか。自国の大臣の失言にはよってたかって責め立てるが、もっとすごいメチャクチャな論理、しかも失言というわけでもないアメリカ高官の確信犯的な発言になると、なぜか萎縮するのか、言っても無駄と思っているのか、それとも日本の大臣の失言に比べて視聴者や読者が食いつかないから大きく取り上げないというのが本音なのか、妙に冷静であっさりとした扱いだった。もし、これが中国や韓国だったら、トップニュースで大々的に報じられていたんじゃないか。それにしても日本人ってホントに自虐的で、外国に対してモノをいえない国民だよなぁ。
アメリカには、ジョセフ特使の発言のような「原爆神話」が根強く残っている。つまり原爆の使用が日本の降伏を早めて米兵100万人の命を救った、などという言い訳だ。だが、それは歴史学者からも根拠がない説とされている。当時アメリカはすでに日本が戦争終結のためにソ連に仲介を依頼していたことを知っていただろうし、現に「原爆投下やソ連参戦がなくても1945年末までには日本は降伏しただろう」と、そのアメリカ自身も分析していたという。アメリカは自国兵士や日本の一般市民を助けるために、やむを得ず原爆を投下したのではない。国力を増してきたソ連を牽制するために戦略上、原爆の威力を見せつける必要があったのだ。本当にアメリカが正義の国で、戦争終結のために原爆を使用したというのであれば、まず大量破壊兵器を使用する準備があると日本に降伏を促し、それでも日本が戦争を続けるのであれば、まず1個目の原爆を使用するという手順を踏むべきだろう。だが、現実はそうではない。わずか3日間のうちにいきなり2個を、しかも非戦闘員がたくさん居住する都市に落としたのだ。この実態を見るだけでも、アメリカの「原爆神話」に無理があることははっきりしている。日本の一般市民を大量殺戮しておきながら、日本人の命を救ってやったとは、極めて身勝手な解釈としかいえない。こんな発言に対して当たり障りのない反論しかしない政治家も情けないが(アメリカの核に守られている現状では、正面切って反論しにくいのもわかるが)、自国の大臣には強気に出るマスコミが、なぜかおとなしいのも私は気に入らない。久間さんを批判したマスコミは、それよりも何倍も強い論調でジョセフ特使を批判すべきではないのか。
|