| 米国産牛肉輸入再開について/2005年10月28日
BSE問題で米国産牛肉の輸入を再開するか否か、ということで議論噴出しているが、26日の朝日新聞には67パーセントの人が輸入再開反対という世論調査の結果が掲載されていた。多くの人が反対というのは当然であろう。逆に私は賛成している21パーセントの人の見識を疑う。賛成している人というのは、そもそも米国産牛肉輸入再開にリスクがあることを知らないか、知っていてもリスクに対する意識が欠落しているか、そうでなければ自分たちの商売のためには多少のリスクは存在しないことにしてしまいたい、実に利己的な考えの持ち主かのいずれかでしかない。
牛肉を輸出し利益を得ている米国側が、「米国産牛肉は安全」というのは当たり前なのだ。利益がほしいのに「たぶん安全だと思いますけどね。でも世の中に絶対なんてことはないですから」などとホンネをいうはずもない。ここで重要なのは食べる側の立場で考えなければならないということだ。米国側は「安全」というが、果たしてそれは正しいのか。利益優先でいっているに過ぎないのではないか。そこに視点を置かずして「米国側が安全と言っているから安全」と判断してしまうのは実に脳天気。おめでたい性格というほかない。アメリカは地球温暖化京都議定書に組みしないなど、国益を最優先に考える国である。その国がいうことをそのまま受け入れる神経が私には信じられない。まぁ、普通、国家というのは国益を最優先するのが当たり前なんだけどね。国益を優先しない無能な政治家や官僚が、どこかの国にはワンサカいるから、それに比べればアメリカは至ってノーマルなのかもしれないが、だがそうはいっても優先しすぎだろう。
現にアメリカ国内の調査でも牛の解体処理の規則違反が1300件以上も報告されているという。つまり「この部位はBSEに感染していた場合危険だからきちすと除去すべし」などのきまりを守らなかった例がこれだけの数、実際にあったということだ。もしBSEに感染している牛の解体処理の際に、偶然きまりごとが守られず、食肉として流通する部分に危険な部位の肉片が付着したらどうなるのか。それは食べた人がクロイツフェルトヤコブ病に罹る可能性が出てくるということである。もちろん、その可能性は高いとは思わないが、最悪の場合、重大な結果を生むことを考えれば、その最悪の事態を回避すべくできる限りの対策をとる、というのが正しいリスク管理のあり方である。ところが日本人というのは、平和ボケしているせいか、こういうリスク管理の意識が欠落している人が実に多い。「まさかそんなこと起きないだろう」「仮に起きても自分だけは大丈夫だろう」というような何ら根拠のない楽観主義者が多いのである。さらに自己の利益が絡めば、結果などはおかまいなし。「そんな事態になる可能性は低い」とか、あらゆる論理ともいえない幼稚な論理を持ち出してきて反論するのである。特に「生態系への危険性に対する意識の低さ」を私は最近まざまざと実感する。それは知識に疎い一般市民ばかりではない。大学教授、マスコミからして、ピントのずれた論理を平気で展開しているのである。それは私が別項でも書いている「犬連れ登山」にしろ、「バス問題」「外国産クワガタ輸入問題」でも同じである。このことはいずれ「生態系音痴が日本の自然を破壊する」というページで詳しく指摘したい。このページでは、世の中にウヨウヨいる典型的な生態系音痴の人々(著名人)を実名を出して批判するつもりにしている。
ところで欧米諸国というのは、古くから自然科学を発達させてきた優秀な人びとだと思うが、意外と論理と乖離している主張も多い。欧米の動物愛護団体のように自分たちは牛などの家畜を殺して食べているくせに、クジラを捕って食べるのは野蛮だというような主張である。牛は食べてもいいがクジラはダメという理由は一体何だろうか。クジラの頭数が減って絶滅の危険性があるというのなら反対する理屈もわかるが、「野蛮」とは余計である。しかも調査捕鯨で数が増えているにも関わらず反対しているところを見ると、そういうわけでもなさそうである。つまり論理もへったくれもないのである。だいたい動物愛護団体というのはどこの国でも決まって論理音痴、科学音痴の手合いが多いのにうんざりするが、科学の先輩である欧米諸国もこと動物愛護団体となると日本とレベルは大差ないようである。論理よりも感情を優先する幼稚な主張には私は到底ついていけない。
そもそも動物を取り尽くして絶滅に追い込んだのは圧倒的に欧米人の方が多い。日本人が絶滅に追い込んだのはニホンオオカミとニホンアシカ、ニホンカワウソ、トキくらいなもんだ。日本人は自国の動物を絶滅に追い込んだくらいですんでいるが、欧米人は諸外国に行って絶滅に追い込んでいるではないか。果たしてどっちが野蛮か。さらにいえばもともと日本人は肉食中心の食生活ではなかったわけで、欧米人に比べてよほど動物に優しい食習慣をもっていたともいえる。しかも捕鯨はひとつの文化である。ソウルオリンピックのときに韓国の伝統的な犬料理に欧米諸国から「野蛮」の声が挙がり、韓国国内でも開催期間中は自粛しようと言う声が出たそうだが、そんなことする必要は一切ない。韓国の伝統文化を一方的に野蛮呼ばわりとは何様のつもりか。その根底には欧米の文化こそ最も優れているという意識しか見えてこない。それぞれの国が長い歴史で育んだ文化というのは、それぞれ尊重すべきことである。それを自分たちの文化は優れているが、あなたたちの文化は劣っているとは実に不見識といわざるを得ない。イスラム諸国に欧米への反発があるのも頷ける。
さて、やや話がそれてしまったから最後にもう一度元に戻そう。
アメリカは牛肉輸入再開問題で「制裁」という言葉まで持ち出しているが、これもおかしなことである。日本はまったく何の問題もないのに輸入再開に踏み切らないのではない。アメリカの牛肉処理に対する信頼性が疑われるから輸入を再開しないのである。現にアメリカ国内からそういう指摘がたくさん出ているではないか。日本に輸入再開してほしければ、それに対してきちんとした対策を打つべきである。その上で「対策したのだからこれで問題はなくなった。さぁ、輸入再開してくれ」というのならわかるが、対策もしていないのに輸入再開しろといわれてもできるわけない。そんなこと当たり前だろう。
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