Nature

※2013年12月15日の日記で書いた内容とほぼ同じ(一部割愛)です。日記の方を読まれた方はスルーして下さい。




◆北海道では犬の放し飼いで飼い主に対するエキノコックス感染リスクが上がる


 
北海道の場合、犬の放し飼いはマナー云々よりも飼い主自らへのエキノコックス感染のリスクを上げるだけの愚かな行為でもある。十年ほど前、私は特に犬連れ登山の犬から飼い主にエキノコックスが感染する危険性を懸念し、道庁に電話して質問したことがあるが、自然保護課はエキノコックスについて何も知らないようで、まともな答えは得られず、「少々お待ち下さい」といわれて散々待たされた挙げ句に電話口に出た別部署の女性担当者は、犬を悪者にしたくないオーラ全開で、「犬にリードさえつけていれば、元気な野ネズミ(筆者注:主にエゾヤチネズミやエゾアカネズミ)を捕まえること自体容易ではなく、飼い主が気づかないところでエキノコックスの幼虫を持つ野ネズミを食べて犬に感染し、さらに犬から飼い主である人間に感染することはあまり考えられない」と説明していた。私はそれを聞いて半分は納得できたが、残り半分は納得できなかった。詳しいことは省略するが、そんなに安易に断言しちゃっていいのかなって疑問に感じたのだが、犬を悪者にしたくない人に何をいっても無駄と思ったので、それ以上の質問は諦めた。


 しかし、その後、おそらく私が懸念した通りの事例が実際に発生したのだろう。最近では北海道保健福祉部が「エキノコックスは犬からも人に感染します」というパンフレットを作成して注意を促している(下の写真参照)。実例がなければ、可能性がある、という言い方しかしないはず。「感染します」と断言しているのは、犬から人間へ感染した例があったことになる。パンフレットの内容は、野ネズミは体長10センチほどと小さいので犬種によっては容易に飲み込んでしまう可能性があり、それによって犬に感染し、その犬の糞から何かのきっかけで飼い主にも経口感染する可能性があるので、放し飼いをしないように呼びかけるものである。それは飼い主が犬をきちんと制御できて、野ネズミを食べさせないようにできれば…という前提であることはいうまでもない。飼い主が犬を制御できず、野ネズミを食べるのをやめさせられなければ、放し飼い同様にリスクは残る。
 こうした状況を見れば、結果的には道庁の担当者よりも私の想像力の方が勝っていたといえるかもしれない。


 ちなみにキタキツネやイヌはエキノコックスの終宿主で、野ネズミやヒトは中間宿主である。終宿主はエキノコックスに感染しても大きな症状が出ることはないが、ヒトの場合は潜伏期が5〜10年と長く、自覚症状が出た時には進行していて、肝臓が次第に膨れてくる、寄生範囲が脳や骨にも広がるなどの重篤な結果に陥り死に至る。ただ、エキノコックスの卵は紫外線や熱に弱く(夏場の紫外線であれば死滅するともいわれている)、感染力も高くはないが、注意が必要であることに違いはない。なお、Wikipediaの「エキノコックス症」ページには、エキノコックスに感染して臓器に多数の嚢胞が生じた、目をそむけたくなるような野ネズミの解剖写真がページの下の方に掲載されている。





↑北海道保健福祉部が配布している犬から人にエキノコックスが感染することに注意を促すパンフレット。





◆犬連れ登山には本州以南を感染エリアにする危険性も。
本州が感染エリアになることは何を意味するのか


 
ところで、さらに懸念することがあるので触れておく。最近は犬も家族という認識が広がり、道外の人が車に犬を載せて北海道を訪問することも多いはずだが、エキノコックスという北海道特有の特殊事情自体知らない人も相当いると思われる。しかも北海道でエキノコックスに感染した犬を本州に連れて帰り、散歩の途中で放置した糞から野ネズミなどに感染が広がっていく可能性も十分考えられる。つまり、道外の人が犬連れで北海道を旅行することは未感染エリアである本州以南を感染エリアにしてしまう危険性さえあるということだ。特に道外から来た犬連れ登山者はエキノコックスに関する知識もゼロだけに何も考えずに北海道の山でノーリードにすることも強く疑われ、通常の犬連れ旅行者よりも、犬が野ネズミを口にする可能性が増え、それだけ感染リスクも上がるものと考えられる。
 北海道も昔は未感染エリアだった。それが今では全域に広がってしまったことを考えれば、本州もそうならない保証はない。


 「犬を連れて旅をしよう」と宣伝している、実はスッカラカンの野田知佑やシェルパ斉藤のような有害人物と彼らを重用して金儲けしたいバカメディア(ビーパルやヤマケイ)が、そのあたりのことを正確に理解しているはずもない(仮に説明しても理解してもらえるかすら疑問。だって、ああいう連中ってのは、もともと科学音痴のバカなんだから)。もし感染エリアになれば人の命に関わるだけでなく、北海道同様に今は飲用できる渓流の水が飲めなくなり、特定の水場だけでしか飲めなくなるかもしれない。厚生労働省は、感染エリアが広がる危険性を強く警告しているようだが、その警告がどこまで一般旅行者に伝わっているか、甚だ疑問である。


 そんな状況を考えれば、こうしたリスクをもっと広報したり、犬を規制する必要があると思うが、先に説明した道庁の職員のように個人的に犬を悪者にしたくない人とか(笑)、それこそペット産業全盛の時代に水をさす、こういう「不都合な真実」が大っぴらになるのを嫌う立場の人とかもいて(怒)、結果的に国民の目から遠ざかっているということもあるかもしれない。




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犬連れ登山を考える

犬連れ登山は本州をエキノコックス
感染エリアにする危険性がある