Nature

高山帯だけは、なぜか遠慮する不思議 (追加記事)


 犬の病気が野生動物へ感染する可能性があることは先にも説明したが、高山帯や森林限界以上さえ避ければ、そのリスクがなくなるわけではなく、当然それ以下のエリアについても注意が必要とも思われる。どこまで大丈夫か、それをいうには、相当な調査や専門家同士の議論などなくして、結論づけられるはずもない。ところが、多くの賛成派はそのような判断を下せる充分な知識や経験もない素人(もしくは専門外)であるにもかかわらず、ここまでは大丈夫、と断言している。私はこのことにも疑問を感じている。
 だが、高山帯だけでも、あるいは森林限界以上だけでも控えたい、というのはまだましだ。以下で紹介する日本アウトドア犬協会のサイトからリンクされている同協会関係者個人のホームページでは、堂々と南アルプスの北岳が犬連れ登山コースとして紹介されているのである。これを見る限り、北岳に犬を連れ込んでも問題ないとお考えのようだ。だが専門家ですら、高山帯についてはライチョウの有無に関わらず口を揃えて問題があるといっているのに、素人が問題ないと判断している根拠って一体なんなんだろうね。
 このホームページを読むと、北岳のライチョウはほぼ絶滅した、とする調査が根拠になっているものと想像される。しかし「「ほぼ絶滅した」ということは、その地域の個体群が維持できないほどの個体数にまで減少した段階と私は認識する。だとすれば、まだ少数のつがいが残っている可能性はないのだろうか。私はライチョウの専門家ではないから詳しくはわからないが、私にはその可能性も否定できないと思える。であるのなら、かろうじて残っているライチョウへの配慮もなく、ほぼ絶滅したのだから犬連れ登山は構わないだろうと、ネット上で北岳を犬連れ登山コースとして公表するのはいかがなものか。また、この関係者にはライチョウという視点しかお持ちでないようだが、それ以外の動物については考慮しなくてもよいのだろうか。そもそも専門家にも意見を求めるようなことはしたのだろうか。そんなこともせずに不特定多数の人が目にするネット上で、万一のことがあれば、極めて大きな問題になる可能性があることを素人が平気で公表しているのである。


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