バカであればあるほど
頭の条件反射だけで答えを出しやすい





 ここでいう「頭の条件反射」とは、本サイト「日記」欄の2017年11月13日付記事に書いた「旧日本軍=悪」みたいな、思考する上での条件反射のことです。もともと条件反射というのは、生物学・医学用語で、ロシアの生理学者イワン・パブロフが発見した生物に備わっている学習メカニズムを指します。パブロフは、犬にエサを与えるときに必ずベルを鳴らす実験を何度も繰り返すと、やがてエサがなくてもベルを鳴らしただけで犬がよだれをたらすようになったことから、生物に「条件反射」という機能が備わっていることに気づきました。そのため条件反射のたとえとして「パブロフの犬」もよく用いられます。

 当該記事で私は、すべてのものには光と影があること。旧日本軍がしたことすべてが悪かったわけではなくて、明治以降の世界情勢の中で強力な軍隊が存在することで、日本が欧米の植民地にされることを防いだ大きな利点があったこと。また旧日本軍軍人のすべてが悪人だったわけでもなくて、人間として立派な将校や兵士もいっぱいいたこと…などを指摘しました。
 しかし、物事をロジカルに考えられない人々は、二分法が大変お得意であることも大いに影響して、過去に中国大陸での関東軍の蛮行などを聞いた際に「旧日本軍=悪」という、ものすごく単純な図式を頭の中にある「これぞ、絶対に正しい引き出し」に安易に入れてしまったりするわけです。
 中国政府の主張をそのまま100%鵜呑みにして、こんなに酷いことをした旧日本軍が善であるわけない。悪に決まっているというわけです。しかも、母国の悪い点は悪い点として素直に認め、国をも越えた公平な判断ができる自分は、「なんて立派な人間なんだろう」と酔いしれながら…でもあります。なのでバカ正直な発想になりがちなお人好しの日本人は、余計に自分にとって気持ちいい方を選択しがちだったりもするわけですが、「それは本当に真理か」という本来は絶対に必要な冷静な視点が、彼らの頭にはそもそも存在しません。

 厳密には「日本軍=関東軍」というわけでもありませんし、おそらく関東軍の中でも部隊によっても上官によっても、あるいは転戦ルートによっても状況はいろいろだったと考える方がむしろ自然な話しです。中国各地で様々な非人道的な蛮行があったのも事実でしょうが、その蛮行が関東軍のほとんどの部隊で連日のように繰り返されていたのか、それとも一部部隊の例外事案に過ぎないのか、もっといえば世界的に見て旧日本軍が、他国の軍隊と比較しても本当に際立つほど蛮行が多かったのかどうか、という冷静で緻密な視点なんて、彼らにはまるで存在しません(だって、もともと単純なんですから)。
 当時の軍人の中には、自らの蛮行を証言している人もいる一方で「自分の部隊では民間人に被害を及ぼすことは一切なかった」と証言している人もいます(どちらも以前、朝日新聞の「声」欄に載っていた元軍人からの投書より)。そこから考えれば、、少なくとも関東軍のすべての部隊で蛮行があったわけではないのは、事実として垣間見えてきます。

 ロジカルに物事を考えられない人は、要は単純ということに尽きますので、事例毎にそれぞれ個別に改めて考え直す…という習慣など、もちろん微塵もありません。従って「旧日本軍」とキーワードが出てきただけで、頭の中にある「これぞ、絶対に正しい引き出し」にあらかじめ自分が入れておいた「旧日本軍=悪」という図式にだけ当てはめて、「それは悪に決まっている」という答えをまさに「条件反射」的に出しがちになります。

 仮に彼らに反論をしてみたところで、彼らの視点でいえば、「何いってるんだ! オレの頭の中にある『絶対正しい引き出し』に入ってるんだぞ!! だったら正しいに決まっているじゃないか」みたいな反応になるわけです(笑)。そして、やっぱり二分法思考回路エンジン全開で「100%悪か、100%善か」みたいな恐ろしいほど単純過ぎる視点から「旧日本軍=善だなんて、どうかしている」という風になっちゃうわけです(ホントにバカほど困ったものはありません)。

 しかもです。慎重に慎重を重ね、いろいろと考え抜いた上で、自分の頭の中にある「絶対に正しい引き出し」に、その図式を入れているのならまだしも、マスコミや誰かから仕入れた情報をろくに検証することなく、「へぇーそうなんだ」→「では、その情報は、早速自分の頭の絶対に正しい引き出しに入れておこう」みたいな、極めて杜撰な過程しか踏んでいないことの方が多いわけです。それなのに、なぜか自信満々という呆れ果てる実態には、千回バカにしても足りないほどですね(笑)。

 彼らは、もともと単純な方々なので、前述したように事例毎にそれぞれ個別に改めて考え直す習慣ももちろんないため、大雑把な図式を一旦、「絶対に正しい引き出し」に入れてしまうと、厳密には、その図式に当てはまらない事例でも、その図式にだけ単純に当てはめてしまいます。しかし当然、図式には当てはまらない事例なので、答えはズレているわけですが、そんなことにはまったくお構いなしです。

 彼らの問題点をわかりやすく、たとえてみましょう。例えば「東京都=人口が多い=車が多い=渋滞が多い」という情報をどこかで得て、一度、自分の頭の中にある「絶対に正しい引き出し」に入れてしまったとします。都内在住者なら、例外があることはすぐにわかると思いますが、一度も東京を訪れたことがない地方の人だと、そういう情報もそのまま鵜呑みにしやすいと思われます。
 すると、のちのちの判断でも、必ずこの図式に当てはめて、都内であればどこでも「人口が多い=車が多い=渋滞が多い」と思い込んで判断しがちになります。しかし、同じ都内でも23区と西多摩地域では、事情がかなり違うとか、23区内でも深夜や早朝であれば幹線道路でさえガラガラということは日常的にある…といった例外を可能性として考える視点には、なかなかならないわけです。同じく東京都である小笠原諸島という特殊事例が、頭に思い浮かぶことになると、もう完全に無理な話しです。
 とにかく、すさまじいほど単純に「東京都=人口が多い=車が多い=渋滞が多い」という図式は、もう絶対に正しいと思い込んでいて、毎度毎度、その図式にだけ当てはめて答えを出すだけでなく、細かく物事を考える人に向かっても「自分の考えの方が絶対に正しい」と意見をゴリ押したりするような弊害があちこちで存在している…といえば、ご理解頂けるのではないでしょうか。

 このような「頭の条件反射」は誰にでもあると思いますが、頭が柔軟であればあるほど、この問題を克服しやすく、頭が堅ければ堅いほど、「頭の条件反射の数」も増えて、正しい認識ができない可能性が増すと考えられます。つまり、頭の条件反射の数と頭の柔軟さは反比例の関係にあるというわけです。つまりバカであればあるほど、条件反射だけで答えを出しやすいことになります。

 おそらく、以上の私の説明を理解して下さる人は、もともと頭が柔軟であり、一番理解してほしい「頭が条件反射だらけの人」は、当然の如く「自分の考え=正しい」という条件反射も大変お得意なので(笑)、余計に理解するのが難しいだろうと想像できます。
 つまり、頭が柔軟なみなさんは、これからも多かれ少なかれ、「頭が条件反射だらけの人」が繰り出してくるピンボケ意見(しかも、おもしろいように共通して呆れ果てるほど自信満々=本項その4参照)に付き合わざるを得ないことが、たぶんこれからも延々と続くでしょう。お互い、ご愁傷さまでございます(笑)。



 




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