Nature
                                                      Close up!
Close up!
 複眼の間から出ているのは触覚、その下に下向きにのびているのが口吻だよ。口吻のうち外側を覆う部分は下唇と呼ばれ、鞘のような役目がある。その中にちょっと見えている茶色い部分が上唇で、吸血時に皮膚に差し込まれる注射針だ。でも実は完全なストロー状ではなく、下側に丸まった構造をしている。
 この写真ではわからないけど、上唇の下部にも大顎や唾液管などの複数器官が収納され、見かけ以上に結構複雑な構造なんだな。また上唇を皮膚に差し込む時、鞘である下唇は、後側にたわむようになっている。上の写真を見ても、硬い上唇と、その周囲を覆う柔らかい鞘のような下唇があることがわかると思う。

オオクロヤブカの顔

 庭で蚊に刺されそうになったので、手で叩きつぶそうとしたら外してしまった。逃げられた…と思いきや、なぜかそばにポトンと落下。潰せなかったが、ギリギリでダメージを与えたみたいだ。よく見ると大きな損傷はないようで、まだ少し動いている。これは、ちょうどいい被写体が手に入ったというわけで、早速、ベローズ+リングストロボをセッティングして、勝手に血を盗んでいく憎き敵・蚊の顔面を拡大してみることにしたよ。
 ベローズ専用として購入した50ミリレンズにおける最大拡大率でアップにしてみて驚いた。昆虫のなかまだから、複眼なのはいうまでもないが、予想に反して神秘的な藍色をしているではないか! しかも複眼を構成するひとつひとつの単眼は、実に規則正しく並んでいるので余計に美しく見える。さらには体表面を白や黒の鱗片が覆っていることも拡大して初めてわかった(写真下)。グロテスクであることに違いはないが、生物の緻密な造りには、毎度毎度感心せずにはいられない。

 普段は、迷惑な害虫として当たり前のように叩き潰しているわけだが、こんなに美しい眼で、吸血対象である我々人間を見ていた…なんてことをみんなは知ってたかな? でも、いくらきれいな眼をしているからといって叩き潰すのを躊躇するようになることもないだろうけどね(笑)。

関連情報→本サイト動物記「ヒトスジシマカ

File No.0028