<<前のページ | 次のページ>>
実は旧・武蔵国には自生しない
ムサシアブミ
サイトモ科
Arisaema ringens
…………………………………………………………………………………………………

 サトイモ科テンナンショウ属の多年草。仏炎苞が、その昔、武蔵国(むさしのくに)で作られた鎧(あぶみ)に似ていることから「武蔵鐙」と名づけられた。鐙とは、馬に乗る時に足をのせる馬具のことで、武蔵国はその名産地として知られ、今風にいえばブランド価値があったために武蔵鐙と呼ばれていた。「踏む」にかかる枕詞に使われるほどだったそうだ。

 関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄に分布し、海に近い、やや湿った林や竹藪内に生える。3出複葉の葉は同じ形同じ大きさで2個がつき、小葉の先はとがる。葉柄の間から花茎を出し、3~5月に葉よりも低い位置にほかのテンナンショウにはない独特な形をした仏炎苞に包まれた肉穂花序をつける。仏炎苞は暗紫色から緑色まで変化があり、たくさんの隆起する筋が入り、その間は膜が薄く半分は透き通っている。また筒口辺部は著しい耳状となり舷部は袋状に巻き込み、先は短い尾となる。付属体は白い棒状。秋には形が少しトウモロコシを連想させる赤い液果となる。

 前述したように武蔵国に因む和名だが、旧・武蔵国のエリア(東京都、埼玉県、神奈川県の横浜市や川崎市)には分布しない。以下の写真は、横浜市内の里山景観が残る林内で偶然見かけて撮影したものだが、おそらく栽培品が野生化したものだろう。『神奈川県植物誌』(神奈川県立生命の星・地球博物館)でも、その調査に際に横浜市や川崎市、厚木市などでも見つかったが「いづれも逸出したものと考える」と書かれている。




横浜市内の雑木林で2000年5月に見かけて撮影したムサシアブミ。近くにはエビネも数株咲いておりビックリした記憶がある。エビネは自生だと思うが、こちらは野生化した株と考えるのが自然。



ユニークな形状をした仏炎苞。いく筋も入る白線は、よく見ると半分透けていることがわかる。



  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記