Nature
 File No.039
ネットワーク接続型宅配ボックス


 実家に帰ったり、あるいは取材に出かけたり、ある程度の期間、自宅を空けることが年に何度もある私にとって、不在時の郵便物をどうするか、というのは大きな問題。以前住んでいた集合住宅では、玄関ドアにポストがあるタイプだったので、ドア裏側の郵便受けを外して、下に大きめのプラスチックコンテナを置いて対応した。郵便受けを外せば、外から入れた新聞や郵便物はそのままコンテナの中に落ちる。1〜2ヶ月不在にしても入り切らなくなることはないので、久々に帰宅したら玄関に郵便物やチラシが山になっていることを除けば、まったく問題はなかった。

 ところが転居した貸家の玄関ドアにはポストがないので、別途、市販のボックス型のポストを玄関横に取り付けなければならず、しかも、それでは容量が限られるので、わずか数日留守をしただけで新聞でいっぱいになってしまう。もちろん、不在の度に新聞店に取り置きを依頼する手もあるが、それもしなくてすむ方がいい。

 実は、好都合なことに半畳ほどの倉庫が付いており、倉庫のドアを自作のものと交換して、ここを不在時ポストにすれば、問題が一気に解決する。折しも再配達が多いことによる宅配便業界の厳しい労働環境がニュースになった頃だったので、宅配ボックスも兼ねさせれば、なお結構だ。大家さんに事情を話し、倉庫ドアを自作のものと交換したいとお願いすると、ありがたいことにあっさりOKして下さったので、転居後、しばらくしてから製作に取りかかった。

 ドアの寸法を計り、ホームセンターで必要な材料を買いそろえ、ノコギリで角材やベニヤ板を切断して組み立てる。何度も追加で材料を買いに行き、最後にペンキで塗装した。結局、4日間くらいかかって完成。
 次に宅配ボックスの内側で荷物をどうキャッチさせるか、いろいろ思案。丈夫なネットを買ってきて箱状に編むしかないかな…と考えていたところ、たまたまホームセンターで草刈り用のバッグが「現品限り900円」で売られていたのを見つけて、迷わず飛びついた。これなら、たとえ数ヶ月分の新聞が溜まっても大丈夫そうだ。

 実際にしばらく不在にしてみたところ、新聞や郵便、宅配便配達の人も玄関ポストに張り出しておいた「配達の方へお願い」を読んで、その通りに対応してくれて、帰宅してみたら、宅配ボックスの中に新聞や郵便物、宅配の荷物がちゃんと入っていた。雨水の侵入もちょっと懸念したが、まったく問題なく使えることがわかった。

 最近は、さらに倉庫内の天井にネットワークカメラを取り付けた。室内の無線LANでネットワークにつながり、しかも動体検知ができるので、宅配ボックスに何かが投入される度に、その画像がメールが送られてくるので、遠方にいても投入されたことがわかるし、暗い倉庫内でも赤外線で見れるので照明がなくても宅配ボックス内の様子をリアルタイムで昼夜問わず監視することができるようになった。
 つまり800km離れた広島の実家に滞在中でも、例えば新聞配達の人がうっかり配達し忘れたとしても「あれっ!? 今日は休刊日でもないのに新聞が届いていない」というのがわかるというわけ。

 つまりネットワークに接続できる宅配ボックスということになる。しかも大容量だ。ネット通販全盛の時代、こんな宅配ボックスがあれば、不在にしても再配達に気兼ねする必要もなく、帰ってすぐに荷物を手にできる。運送会社の手間が減るだけでなく、地球環境にも優しいことになる。工作が得意な人で、しかも自宅に同じような場所を確保できる人は、製作してみてはいかがだろうか。便利だよ。

 ちなみに自宅室内にもネットワークカメラを取り付けてあり、こちらもリアルタイムでいつでもスマホで見れるようにしてある。長期不在中に自宅の無事な様子を確認できれば、やはり安心できる。ひと昔前なら想像もできないことが可能となり、いやはや、隔世の感がある。



今回、製作した宅配ボックスドア。投入口は外側と内側に扉を付けて二重にした。投入口の下に写っている白いプラスチック箱の中には、シャチハタ印鑑が入っていて、宅配便の受取印として使ってもらうようにした。

ドアには、もちろん鍵を付けた。鍵といえば製作上、一番簡単なのは、かんぬき金具と錠前を採用する方法。しかし、それではスマートじゃないと思ったので、キーシリンダーを買ってきて、ドアにシリンダーを収納する穴を開けて、写真のように普通の玄関ドアみたいに加工した。今回、買いそろえた部材の中で、ネットワークカメラを除けば、一番高かったのはこのキーシリンダーだった。



投入口。扉は板一枚のままだと、時間経過とともに曲がったりしてピッタリ閉まらなくなることが予想されるので、天地方向に補強材を2本渡しておいた。メッセージ板は差し替え交換が可能なので、帰宅したら「郵便物や新聞は玄関ポストへ」というメッセージ板と交換する。



長期不在時のメッセージ板内容。A4粘着ラベルにレーザープリンタで出力し、薄いプラ板に張り付け、さらにその上からUVカットの透明フィルムを貼ってある。正確にいえば中にあるのは「ネット」じゃないけど、要は荷物をキャッチする部分は宙に浮いていて、安全に投入できるということを配達の人に理解してもらうことが重要。



投入口の外扉を開けたところ。中に内扉があり、押し込むと投入できる。左右の白い部分はマグネット。

投入口の寸法をどれくらいにすべきか、結構迷ったが、宅配便の基準サイズも調べた上で幅50センチ、高さ30センチに決定。私の場合、ネット通販などで買い物しても、ほとんどの荷物はこれ以下だろうとの想定もあった。箱の短い方の幅と高さがこの寸法内であれば、奥行きがもっと大きくても対応でき、例えばミカン箱(幅30cm×高さ17cm×奥行38cm)くらいなら余裕で投入可能だ。

投入口が大きすぎると盗難や雨水侵入の可能性も出てくるし、大きい荷物が入るということは、その分、重い荷物の可能性も増し、そんな荷物を無理に投入されると、バックが耐えきれずに破れる可能性も生じる。逆に小さいと肝心の時に入らないことにもなりかねない。そのボーダーラインが、このサイズくらいと考えた。

投入口が、ドア前に立った時の視点よりも少し高いところがポイント。これなら仮に盗もうと手をのばしても投入された荷物には届かない。脚立があっても難しい。



宅配ボックスドアを開けたところ。内扉は、最初バネを取り付けようかと思っていたが、ホームセンターに手頃なものがなく、押し込む際にあまり力を要するのも問題。内寸ギリギリのダンボール箱を投入する時、内扉は水平になるほど上がらなくてはならず、その動きに対応できるものといえば、金属製バネよりも大きくのびる手芸用のゴムヒモの方が適していると判断。繰り返し使用するうちにゆるみやすいのが難点だが、交換するにしても安価ですむ。上に上げるタイプの扉なので、なくても自然に閉まるのであまり問題はないが、ゴムヒモの緩い力でピッタリ閉まるようにしておいた。

内扉下の黒い板状のものは、投入物ガイドの役目をする樹脂板。何もなければ、投入物が前方に偏ってしまうが、これによってバックの真ん中に落ちて、全体としてバランスが取れる。

また緑色のバッグは、これほどの大きさがあるので、たとえ3〜4ヶ月留守にしても、その間の郵便物や新聞をたっぷり収容できる。四方の柱に取り付けた金具にカナビラと太いロープを介して宙に浮かせてあり、つまりカナビラを外せば、容易にバッグごと持ち出すこともできる。庭で刈り取った草をまとめるためのものだが、左右から底部まで渡すように厚手のベルトが縫い付けてあって、かなり丈夫に作られており、まさにうってつけ。



内扉も板が曲がらないように補強材を取り付けた。これで、ほぼ平面が担保され、ほぼピッタリとフタができる。外扉・内扉とも扉を閉じたときに大きな音がしないように発泡ウレタン材が貼り付けてある。



実際にネットワークカメラが送ってきた画像。早朝3時前、新聞が宅配ボックスに投入された瞬間、内扉から完全に落ちる前に鋭く動体検知してメールしてくるのは、もうスゴイというほかない。スマホでカメラの向きは変えられるので、バッグ内にどれほどの新聞や郵便物がたまっているのかも確認できる。





















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