4連ブラシ


Nature

ワッセルマン
試験管

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作る!

図B

図A

ワッセルマン試験管用4連ブラシ

図C

File No.005


左手で4本のワッセルマン試験管を握り、そこに4連ブラシを差し込んで洗浄する。
 
4本の試験管を手にとって握ると各試験管はこのように並ぶので、必ず試験管の中心線(赤点)は一定する。
 
 柄の中にバネを入れて「遊び」を作るとベスト。
   
   

 大学3年の時、考案したワッセルマン試験管用4連ブラシ。ワッセルマン試験管というのは微生物培養に用いる試験管のことで、普通の試験管よりも短くて径もひとまわり小さい。培養に用いたあとの大量のワッセルマン試験管は洗浄し乾燥し、再び使用するわけだが、その洗浄作業はかなりの重労働。1本の試験管ブラシに専用の洗剤をつけてゴシゴシ繰り返すわけだが、中には培地が固く付着しているものもあるから、1本1本きれいに洗うのは時間がかかって大変なのだ。そこで何とか効率よく洗浄したいと思いついたのが、この4連の試験管ブラシ。
 試験管に限らず筒状の物体を4本手にとり握ると、必ず図Aのように4本が互いに接して安定する。それを上から見ると図Bのような配置だ。つまりどんな状態で手にとっても4本の試験管の中心線は一定するというわけだ。その中心線に合わせて4本の試験管ブラシを固定できるようにすれば、一度に4本の試験管を4本のブラシで洗浄できる。私の場合は厚めの樹脂板を切って八角形の板を2個作り、それぞれ指定の位置にブラシを固定できる溝を開け、そこにブラシの柄を差し込むようにした。あとは輪ゴムで縛ればOK。ブラシが劣化しても交換は容易だ。
 実際に使ってみると作業効率はかなり改善したように感じた。単純に計算しても効率は4倍、作業時間は4分の1となるのだから当然だ。私が作ったのはワッセルマン試験管用だったが、もちろん普通の試験管でも同じものが作れる。ただ普通の試験管を大量に洗浄するようなことがあるのかどうか。それにワッセルマン試験管よりも長いのでブラシの柄も長くする必要があり、4本の試験管の中にスムーズにブラシを入れることができるのか疑問に思う。ブラシの中心線が多少でもズレると入れにくくなり、かえって作業効率が悪化する可能性もある。柄を丈夫にして中心線からズレにくくするなどの改善が必要だろう。
 なおこの4連ブラシで洗浄する際は、単純に上下のピストン運動だけでなく、若干ねじらせると汚れが残りにくい。ねじらせることができる「遊び」が生じる作りにしておく方がいいだろう。本当は図Cのように柄を筒状にしてその中に少し強めのバネを入れてブラシ先端の位置も「遊び」が生じるようにしたかった。つまりブラシ先端のズレや、あるいはワッセルマン試験管4本の上下位置のズレ、あるいは先端毛の摩耗によってはブラシ先端が試験管内底部に接しなくなり、汚れが残る可能性があるからだ。バネで遊びが生ずるようにしておけば、多少のズレなどはその遊びで吸収できる。さらにいえば押し込めばブラシが回転できる構造にしておけば完璧だ。ネジを回すドライバーにも押すと回ってネジを閉めたり緩めたりできるタイプのドライバーがあるが、そんなイメージ。つまりグリップ部分を作り、そこを持って押し込めば、先端の4本のブラシが回転するようなしくみにしておく。それに合わせて全体をピストンのように動かせば、かなり効率的に洗浄ができると思われる。
 実験器具やそれに付随する道具には、基本的に「効率性」という概念が入り込む余地は少ない。効率性よりも確実性の方が重視されるからだ。だが、たとえ試験管の洗浄ひとつとっても効率的な方がいいに決まっている。いや実験器具ばかりではない。日常の作業の中にも、ちょっとした工夫で効率がよくなることはたくさんある。そのすべてを効率重視にしろとはいわないが、1時間の作業が30分ですんで結果がまったく同じなら早い方がいい。普段から盲目的に過去の習慣を模倣するのではなく、この作業はこうするともっと効率よくできるのではないかとか、こうすればよりよくなるのではないか、と考える習慣をつけておきたい。それがさまざまな状況の改善につながる。もちろん新しいことには、思わぬ盲点が潜んでいる可能性もあるので注意する必要はあるし、すぐに完璧な方法にたどり着けるとは限らないのはいうまでもないが。