File No.051
電気柵の配線と設置


 各地で野生動物による農作物被害が深刻化しているが、山裾にあるうちも例外ではない。かつては皆無だったが、近年、夏になると出没して被害に悩まされるようになった。経験がまったくないのに加えて、なるべくお金も時間もかけたくないので、最初のうちはポリエチレン製の防獣ネットを張ってみたりしたのだが、イノシシにはほぼ無意味。簡単に穴を開けられる。次にスチールパイプを樹脂でくるんだ園芸用のイボ竹をカラーワイヤー(樹脂コーティングの針金)で固定して格子状にした柵と杭で畑を囲ってみた。これは手間はかかるが、一定の効果はあった。しかし、少し弱い箇所がある別の畑では、そこを目ざとく見つけられ、あっけなく突破されてしまった。さらに今まではスルーされていた、結構頑丈に組んだ畑にも今年とうとう侵入されてしまい、この方法でも完全防御は無理と思われた。そこで設置費用はかかるものの、効果は高いとされる電気柵を導入することにした。(※)

 アマゾンで電気柵本体とポリワイヤー、碍子(がいし)など一式を購入(ほかの部材も合わせて計8万円くらいかかった)。ただ、常設しておくには、コード類をのばして地面に置きっぱなしにはしたくない。足にひっかけたりしないかとか、紫外線で経年劣化しないかとなど、いろいろ不安があるし、見た目もスマートじゃない。どうせ設置するのであれば、きちんと工事をして設置することにした。

 うちの場合は電気柵で守りたい畑は大きく分けて3つに分かれており、畑ひとつを電気柵で囲めばよいという状況ではない。かといって各畑に1台ずつ電気柵本体を用意していてはコスパが悪すぎる。やはり本体は1台ですませ、なおかつ各畑の電気柵を選択的にオン-オフできるのが理想だ。

 そこで電気柵本体1台を電源をとりやすい家の外壁面に設置して、そこから各畑にコードをのばすことにした。コードは電気柵につながる出力線と、アース棒につながるアース線の2本が必要だが、それぞれ単線の赤と黒(色違いにしておくと工事の時に紛らわしくない)のアース用電線を利用。最初の設置工事では、この2本を並べてそのまま埋設したのだが、設置が終わって電気柵の電圧を計ると、埋設前に計った数値よりも随分低下していた。ネットで調べると、電気柵は1万分の1秒という瞬間であるものの、1万ボルトもの高電圧のパルス電流が流れるので漏電しやすいようだ。つまり2本のコードをそのまま埋設しただけでは地中に漏電してしまうことになる。当然、出力線とアース線はなるべく離した方がいいらしい。そこで出力線だけは電気工事に使用されるcd管に通して埋めることにした。またまた出力線を掘り出して、cd管に通して埋め直す作業を余儀なくされた。もちろん埋設の際もアース線をなるべく離すようにした。この工事をしたところ、ほぼ元の電圧に戻った。

 続いて畑の周囲に碍子を設置して、電気が流れるポリワイヤーを碍子に適度に巻きながらのばしていく。また電気柵本体からのばしてきた出力線のオン-オフができるスイッチをプラスチックボックス内にねじ止めして、ボックスを杭に固定して畑のすぐそばに設置。スイッチからコードを出してワイヤーに接続すればOKだ。

 またほかは知らないが、うちの場合はイノシシが来るのは夜間ばかりで昼間に堂々と来たことは一度もない。なので電気柵をオンにするのは夜間だけで十分。電気柵本体の寿命をのばすためにも、また昼間に人間がうっかり感電してしまう事態を避けるためにも常時オンにするメリットはなにもない。そこでタイマーを介してオンにする時間指定もできるようにした。たまたま以前買って使っていなかったタイマーを利用したが、新たに買うのであれば、wifi受信エリアであればスマートプラグの方が使いやすいかもしれない。これならスマホでオン−オフもできるし、タイマー機能でオン−オフの時間設定や変更も簡単だ。

 さらに電気柵本体の電源を交流100ボルトのコンセントからとる場合は、法律で漏電遮断器を付けなければならないので、これもアマゾンで購入。こうしたタイマーや漏電遮断器を入れるプラスチックボックスを本体と並べて設置した。さらに電気柵には高圧電流が流れていることに注意を促す看板の設置が義務付けられているとのことなので、電気柵本体に付いていた看板のほかに10枚くらい自作して設置した。

 こうして、ようやく電気柵工事は完了した。

 以後、イノシシ被害はおもしろいようにパタリとなくなった。おそらく一度来て、電気柵に鼻が接触。すさまじい高電圧に驚いたものの、しばらくして再訪したと思われる(被害はないが、足跡があった)。ところがやはり高電圧を喰らい、餌場としては完全に諦めたのだろう。うちの場合、電気柵は効果として完璧という印象である。



※ 実は電気柵を導入することにした少し前、別の方法も試してみた。ホームセンターで見つけた防獣フェンス(太めの塗装金網)を使う方法だ(一番下に写真掲載)。杭(長短2種類)と3×4センチの角材に防腐塗料を二度塗り。特に地面に埋める部分にはさらに油性ペンキを上塗りする。長い杭の間に短い杭を打ち込んで、長い杭間の天地に角材を2本渡してフェンスを挟んで木ネジで固定。地側の角材には地面との間に隙間を作らない(イノシシは隙間を狙ってくる。隙間に鼻を押し込んでグリグリ開けようとするようだ)ように固定すれば、結構しっかりとした柵になる。市販の防獣フェンスにもいろいろあるが、イノシシ防御を目的としたものであれば、かなりの強度がある。実際、この防獣フェンスで囲まれた畑は今のところ被害ゼロ。ただ、すでにある柵で囲った畑を防御するには電気柵の方が簡単。全体のコスト比較すると微妙なところではあるが。



スチールパイプを樹脂で覆った園芸用のイボ竹をものの見事にへし折ったイノシシのバカぢから。これじゃ、少々の防獣対策では歯が立たない。



結構長い間イノシシ被害から作物を守ってきた防獣ネットハウス。中に植えているのはカボチャ。おいしそうなカボチャを前にして、これまで以上の身体的能力を発揮して、この高さでもネットを破って侵入。しかも穴はひとつじゃない。複数のイノシシが来ていることを伺わせる。



昨年夏、防犯カメラが自動で撮影したイノシシの子供(ウリ坊)。写ってはいなかったが、おそらく親イノシシも近くにいたはずだ。



オレンジ色のポリワイヤーをのばして電気柵を設置した同ハウス。黒いのは碍子。



↑出力線を収納したcd管を庭に埋設する。白いのは防犯カメラのLANケーブルと電源ケーブルを収納したpf管。以前埋設したものだが、同じライン上なので一旦掘り出した。


↓防虫ハウスにも電気柵を設置して、本体から出力線をのばす。ここでは碍子の替わりに一部にプラスチック製の洗濯ばさみを使った。碍子の代用になるとのネット情報による。


↑コンクリート段差では、下にトンネルを作ってcd管を通す。すでに防犯カメラ用のpf管を通してあったが、また掘ることになった。



↓同様の障害がほかにもあって、その度にトンネルを掘るハメに。ここは電気柵が不要なイノシシ防御ができる防獣フェンスで囲まれた畑だが、ルートの都合上、下を通さざるを得なかった。


↑3つの畑それぞれに電気柵のオン-オフが可能なスイッチボックスを設置した。



蓋を開ければ、中に出力単線のスイッチがあり、電気柵稼働中でも任意にオフができるようにした。



↑家の外壁面に設置した電気柵本体(左)。右上のボックスにはタイマーと漏電遮断器を収納。

右下のボックスには出力線とアース線を分岐させる端子台が入っている。出力線は3本のcd管を通って、各畑までのびている。




自作した感電注意看板。パソコンソフトでレイアウトし、レーザープリンターで出力。プラ板に貼ってUVカットのカバーフィルムでコーティング。上部に穴を開けて、ポリワイヤーに取り付けた。あくまで敷地内の菜園なので、あまり気にする必要はないが、念には念を入れて「万一」の事態も想定して付けておいた。
防獣フェンスを採用した畑。今のところ獣害に遭っていない。侵入経路上に電気柵があることも大きいと思うが、かなりの強度があり、イノシシがこれを突破するのはさすがに難しいだろう。ふたつの扉も自作。



電気柵配線図



























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