File No.040
カメラのグリップラバー補修方法


 一眼レフカメラを多用していると、やがてグリップ部分に貼ってあるラバーが浮いてきて、剥がれかける。私の場合、2008年に購入したNikonD700が、5年後に剥がれ、2013年に購入したNikonD800が、4年後の今年に剥がれた。ラバーが剥がれかけて浮いてくると、そこだけペコペコして感触が悪いし、最悪、何かのはずみにラバーが一気に剥がれてカメラを落とすことにつながりかねない。
 先日、取材中にラバーが浮いてきたのに気づいたが、取材先では対策のしようがないので、なんとか使い続け、帰宅してから接着剤で補修した。

 ベストなのは、もちろんニコンに修理依頼することだが、グリップラバーの張り替えは工賃込みで7000円もかかるらしい。しかも、修理に出せば、しばらくカメラが使えないことになる。そこで、D700の時も今回も自分で貼り直した。

 一度、ラバーを完全に剥がし切ってしまった上で本体に再度、合わせてみると、剥がれる時にラバーが少しのびるようで、一方の端を合わせると、もう一方の端は本体の貼り合わせ面から数ミリはみ出してしまう。これがグリップラバーを自分で貼り直す際の最大の問題といえる。

 しかし、うまくやれば、一度剥がれたグリップラバーであってももう一度、きれいに本体に貼り直すことは可能だ。少しばかりコツがいるが…。

 グリップラバーはメーカーによっては接着剤で貼っているが、NikonD800の場合はラバーの形状に合わせた強力両面シールなので、まずはそれをきれいにはぎ取る。はぎ取る際にどうしても力をかけてしまってラバーがわずかにのびてしまうが、残っているときれいに貼り合わせられないので、時間がかかってもこれを完全に除去したい。
 次にラバー裏面にホームセンターなどで普通に売っているセメダイン製の多用途弾性接着剤「スーパーX HYPER ワイド」を全面に塗布。この時、同接着剤に付いているヘラを利用するとよい。ちなみに瞬間接着剤は向かないように思う。

 この接着剤の説明書にも書いてある通り、塗布後10分程度放置し溶剤を揮発させてから貼るのが正しい使用方法。説明書きをよく読まないで、塗ってすぐに貼ってもうまく接着できない。少し放置してから貼ると、強力に貼り付く(貼り直しも可能)。ここが重要なポイントで、強力に貼り付くので、端を固定できる。そうするとあとの微調整がしやすいのだ。
 もし塗ってすぐに貼り、本体の貼り合わせ面にラバーの端を合わせた上で、もう一方の端を無理に合わせようとすると、ラバーが接着剤ですべって端がはみ出してしまう。だからうまく貼れない。しかし、少し放置したあとであれば、かなり強く貼り付くので、ラバーの端を合わせて貼り、その端の方に向けて少しずつ圧を加えながら(ラバーが短くなるように)、少しずつ貼っていくと、うまく本体にぴったり貼ることができる。

 貼り終えたら、きつくマスキングテープを貼って固定する。この接着剤は24時間で実用強度になるが、3日間置くと最強強度に達するとのことなので、できればそのあとにマスキングテープをはがすとよいだろう。マスキングテープがいいのは、貼りやすく剥がしやすく、しかも一度貼るとズレない点だ。

 同じ方法で貼り直したNikonD700は、その後4年経過しているが、今のところ剥がれていない。ただし、なにしろ貴重品なので、工作があまり得意じゃない人は、ニコンに修理依頼する方が確実。万一、なんらかの失敗をしても責任は取れないので、あくまで自己責任でチャレンジして下さい。



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グリップラバー補修のコツ


 ラバー裏面に残っている、もともとの両面シールや接着剤は、時間がかかってもきれいに除去すべし。取りにくければ、燃料用や消毒用のアルコール(=エタノール。燃料用の方が安価だが、メタノール入りのものは経口毒性があるので扱いに注意。薬局に普通に売っており、普段も台所などの掃除用に利用可)も利用する。この作業でラバーが少しのびるが、残っているときれいに補修できないので、気にせずに除去しよう。

 多用途弾性接着剤「スーパーX HYPER ワイド」は、ラバー側ではなく本体側に塗る方が塗りやすい(下の写真はラバー側に塗っているが、本体の方が塗りやすいと思われる)。

 多用途弾性接着剤「スーパーX HYPER ワイド」は、多少はみ出ても、あとで擦り取れる(アルコールでも除去可)ので、その点は気にせずに、本体のラバー貼り付け面全体の隅々(特に縁の部分)まで接着剤を丁寧に塗る。塗り残しがあると、あとでそこだけが浮いてしまうので、接着剤がはみ出すくらいに塗っておきたい。ただし、必要以上の量で塗り過ぎると、接着剤層が固まったあとにラバー表面に微妙な凹凸ができてしまう。それでもラバーは固定され、見た目以外の使用上の問題はないが、あくまで薄く均一に塗る方がお勧めだ。ラバー内側の剥がれかけの部分には、接着剤付属のヘラを差し込むようにして接着剤を奥まで塗りつける。

 塗り終えたら、必ず5〜10分そのまま放置する。夏場は5分でもいいが、冬場は長めにしたい。この時、ラバーが接着面に付着しないように、折り返すようにしてテープ等でレンズに固定しておく。

 放置時間を終えたら、ラバー内側(レンズ側)に向けて圧をかけつつ、特にラバーのグリップ部分の各曲がり角に「浮き」が出ないように気をつけながら、ラバーを手で押さえつける。この時、はみ出した接着剤が手に付いたり、その手でカメラの他部位に触ったりすると、そこに接着剤が付いたりするが、あとで擦り取れるので気にせずにラバーをきちんと接着させることを優先する。

 最初は一方を合わせると、反対側がズレたりすることもあるが、一方をギュッと押さえつけると固定するので、その上でラバー寸法が短くなるように少し圧を加えつつ、その反対側末端も押さえつけると、寸法ピッタリに貼り付けられる。

 まずはラバー末端(カメラの正面向かって左側。シャッターボタンがある方の側面)をピッタリ貼り付けたら、とりあえずそこにマスキングテープをラバーとカメラ本体の境に貼り付けて両者がズレないように固定する。続けて中間部分も圧を加えながらカメラ本体に合わせて貼り、ピッタリになったところで、またマスキングテープを貼る…ということを繰り返す。気をつけたいのは、ラバーの下側末端では、一部だけわずかにはみ出し、あとで縁が少し波状になってしまうことも割とあるので、ここにマスキングテープを貼り付ける際には注意。またシャッターボタンのカメラ向かって左下あたりも浮きやすいので、ここには斜めにマスキングテープを貼り付けておくとよい。マスキングテープはいずれもガッチリ固定できるように力を入れて貼り付けること。

 手に付いた接着剤は、燃料用や消毒用のアルコールでも、あるいは石けんでも割と簡単に除去できる。作業用のゴム手袋をするよりも素手の方が作業は行いやすい。特に化学物質に過敏な人でなければ、素手で作業されることを推奨する。グリップラバー表面をアルコールで拭くと、黒々した艶が失われる場合があるが、その場合は艶出し剤などを使う。



※ 結局、メーカー有料貼り替えと遜色ないレベルの補修ができるか、あるいは、よく見れば補修したのがわかるレベルかは、補修者の器用さにもよる。完璧な補修を望む人は、メーカーに依頼する方が確実です。ここで紹介した方法は、多少見た目が悪くてもグリップラバーを固定して、カメラが使えるようにする暫定的な手段に過ぎません。そのことを理解した上でチャレンジして下さい。



グリップラバーを剥がして、裏面の両面シールをきれいに取り去る。続いて「スーパーX HYPER ワイド」接着剤を付属のヘラで丁寧に塗っていく。この写真では、ラバー側に塗ったが、本体側に塗る方が塗りやすい。



接着剤で貼り直し、マスキングテープで固定したところ。この接着剤は、弾性接着剤なので多少ラバーからはみ出しても、あとで擦れば除去できる。



貼り直しが終わったNikonD800のグリップラバー。持った時の感触は剥がれる前と同じ。

    

















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