Nature
 File No.0056

父の介護で作ったもの(3)
浴室のバリアフリー台


 父の退院直後、介護保険の援助によって業者に屋内外に手すりを複数設置してもらった。もちろん浴室にも付けたのだが、結局それでも不十分なので、後付けで私が手すりを追加した。ホームセンターでもアマゾンでも手すり部材を売っているが、取り付けはややコツがいる。うまくやらないと、きれいに取り付けられないし、なにより浴室壁面タイルへの穴あけで失敗すれば目も当てられない。なので結構、緊張する作業となった。

 こうして浴室に手すりがあるお陰で、まだ父の動きがよかった頃は父を立たせたまま、両手でしっかりと手すりを掴ませることができ、その間に母と私の二人がかりで父を洗った。しばらくそれで問題なかったが、次第に動きが悪くなると立たせておくのも危なっかしくなってきた。しかも、浴室への行き来では、私が父を後ろから抱えるようにしなければならないので、かなりの重労働である。加えてうちの更衣室は狭いので、余計に厳しい。

 そんな時、浴室がバリアフリーならどんなに楽だろうと何度も思ったものである。浴室でも使える車椅子があれば、車椅子に父を座らせたまま連れて行き、そのままの状態でシャワーを使って身体を洗う。洗い終えたらその場で身体を拭いて、リビングに戻って着替えさせればいい。でも、我が家の浴室はバリアフリーにはなっていない。

 だが、ふと玄関のバリアフリー台と同様に浴室にも同じような台を作ればいいのではないかと思った。うちの場合、リビングのすぐ隣に更衣室と浴室が並んでいるので、少なくとも更衣室までは車椅子で行き来ができる。問題は浴室のわずかな段差だけ。これくらいならなんとかなりそうだ。

 そこで段差と浴室のサイズを計測して、数日くらいかけてバリアフリー台を作った。玄関の台と同様に父と私の両体重がかかるので、木組み加工した上で25脚で支えるようにした。車椅子留めを取り付けて、クリア防腐塗料を下塗りした上で透明ニスで仕上げた。最後にゴム足をねじ止め。

 浴室に置いてみると、今回はガタがまったくなかった。またアマゾンでキャスター付きアルミ製折りたたみ椅子を購入。リビングで父をこの椅子に座らせれば、あとは椅子ごと連れて行ける。帰りはバックで戻ればOK。

 実際に使ってみると、今までの苦労がウソのように解決。実に楽だった。姿勢が不安定な父を抱えて行くのは、頭をどこかにぶつける可能性もあって危ないが、この方法なら心配もない。しかし、結局、浴室のバリアフリー台は、わずか2回しか父に使えなかった。この直後に父は救急搬送され、半年間に渡る入院を経て亡くなったからだ。もっと早く、この方法に気づけばよかった。



浴室に置いたバリアフリー台。右端は車椅子留め。これくらいの距離なら、シャワー使用も問題ないが、もう少し台を奥に出しても使える。後ろに立つスペースを確保してあるのがポイント。また更衣室の床面と連続する高さにしたので、入口サッシのレールもキャスター付き椅子で簡単に乗り越えられる。



バリアフリー台に乗り入れたキャスター付き折りたたみ椅子。車椅子留めがあるが、念のためキャスターをストッパーで固定する。あとで気づいたことだが、車椅子留めはもっと幅をとるべきだった。短すぎた。この椅子は中国製でアマゾンに注文すると中国から直送されてきたが、到着に少し時間を要した以外は製品自体も梱包もほぼ問題はなかった。座面の股間部分が取り外せるので、お尻も洗いやすくなっている。



浴室のバリアフリー台裏側。25脚にはそれぞれゴム板を接着。使用後はこうして立てかけておくことで、裏面も乾きやすくなる。



大型のゴム足を取り付けたので、立てかける際も床タイルに優しい。




右側の逆L字状手すりは業者に付けてもらったものだが、シャワー下の両側に付いている手すりは、私が付けた。父に両手で掴ませれば安定したが、もう少し低い位置の方がよかった。

この手すりは、業者設置の手すりに近いものをアマゾンで買い、ドリルでタイルに穴を開けて、エビプラグで固定。ただ、手すり金具の穴に合わせて正確にタイルに穴を開けるのは意外と難しい。というのもタイル表面が滑るので、穴の位置に印をしてもドリル先端がズレやすいのだ。この解決方法としては、不要な板に先に正確な穴を開け、まずはその位置で金具が取り付けられるか確認。問題なければ板を強力両面テープで取り付け位置に貼り付けて、板の穴にドリルを当てて穴を開ける。そうすればズレることはなく、正確な穿孔が可能となる。つまりガイドボードを介して穴あけをするということ。ほかにも方法があるが、詳しくはネット参照のこと。どちらにしてもいずれかの対策をしなければ、ほぼ確実に位置がズレるので、要注意だ。タイルへの穴あけはインパクトドリルやハンマードリルではなく、タイル用ドリル刃を普通の電動ドリルに装着して開けた方がいい。インパクトドリルやハンマードリルを使うとタイルが割れることがある。


















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