Nature
山岳記
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難所 長野県長野市・戸隠山 蟻の塔渡り

撮影年月日:2017年7月6日

 左右が切れ立った、やせ尾根とか、山には難所とされる場所がある。例えば、北アルプスの不帰ノ嶮。急な岩場に梯子や鎖場が続き、思わず腰がひけてしまうような場所が連続して、たっぷり冷や汗をかかされる。しかも険しい岩稜のアップダウン。唐松岳から三峰、二峰、一峰、不帰キレットを過ぎると、今度は天狗ノ頭への長い登りが待っている。ほかに八ヶ岳連峰・横岳、中央アルプス・宝剣岳、戸隠山・蟻の塔渡りなどの岩稜も難所といえそう。
 そんな場所では、3点支持が基本。つまり両手両足の4点にうち3点は動かさず固定したままにし、あとの1点でホールドを探ること。それを繰り返すことで、常にバランスが保てる。そして自分がうっかり落石を起こさないように気をつけるとともに、その逆の立場にならないように頭上にも注意することが大切だ。でも自分めがけて近距離から石が落ちてくれば、いくら注意してても回避することは難しい。できることといえば、落石を起こしそうな登山者が自分の前後にいたら、少し距離を開けることくらいかな。


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八方睨側から見た戸隠山・蟻の塔渡り。両側が切れ落ちたナイフエッジの岩稜で距離はそう長くないが、目の前に現れた時の感想は「唖然」のひとことに尽きる。「ええーっ、これ通るの? ウソだろ」…みたいな。写真中央やや左寄り付近に鎖が少し写っているが、その先は鎖すらない区間が存在する。「ど〜して、ここに鎖がないんだよ!!」と一人叫びたい心境だった。登山地図で、ここが難路指定になってないのは、まったくもって理解に苦しむ。高所が苦手な人は絶対にやめておくべき。さらにこの山麓側には高い断崖絶壁に付けられた鎖場がいくつも連続するので、腕力に自信がない人もお勧めしない。人によっては無理した結果、その途中で進退窮まる可能性もある。ちなみに鎖のすぐ上に「曲がった鉄パイプらしきもの」が写っているが、これは左側へ下るための手すりなどではなく、何かの残骸に過ぎない。その鉄パイプ付近から鎖がない茶色い岩稜をなんとかクリアすると、その奧に写っている灰色の岩稜手前で鎖で左側に下降でき、最も険しい区間を巻くことは可能だが、どっちにしても神経をすり減らされる。

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山麓側から見た蟻の塔渡り。写真左側は、ほぼ垂直に切り立っており、誤って落ちたら確実に死ぬ。同じ滑落なら写真右側の方がまだリスクは低いかも。



まさにナイフエッジの典型。不帰ノ嶮の岩稜(左)。これでも多くの登山者が行き交う縦走路だ。3点支持で、落石にも注意!(右)


同じく不帰ノ嶮の縦走路で鎖場に張り付く登山者(左)。北アルプス・西穂高岳のやせ尾根(右)



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