現代に生きる我々が認識している世界観が、
100年後もすべて正しい確率は0%






  ここでいう世界観とは、国際情勢みたいな意味ではなく、あるいは哲学上の世界観でもなく、あくまで人間観、生命・生物観、自然観、宇宙観、さらには死生観も含めての「人間を取り巻く世界観」という意味で使いたいと思います。つまり「人間とは?」「生命とは?」「宇宙とは?」という問いかけに対して、多くの人々が回答するであろう「平均的な世界観」として考えます。

 現代人は、みんな自分の持っている世界観は、きっと正しいと思い込んでいるかもしれませんが、「もし仮に100年後に検証したら、その世界観のすべてが正しい確率は、まず間違いなく0%」と断言できると私は考えています。どこかの学者の受け売りでもなんでもなく、私がいろいろと考えを巡らせる中で、ハタと気づいたことです。念のためいっておくと「あなたの世界観はすべて間違っている」といっているわけではなく、「あなたの世界観のどこかに間違いがある可能性は100%だ」といってるんです。
 さらに現代に生きる多くの人が認識している世界観と、もしかすると1万年後でも人類はたどり着けないかもしれない「最終的な真実の世界観」の間には、かなりのギャップがあるのではないか、とも想像しています。なぜそういえるのか、説明しましょう。

 それは、過去の歴史を振り返れば、おのずとその答えにしかなりません。日本人のみなさんのために、まずは日本の歴史年代で説明したいと思います。
 日本では、一部例外はあるにせよ、縄文時代、弥生時代、飛鳥時代…(中略)…江戸時代、明治時代、大正時代、昭和時代、そして現代に至っているわけですが、それぞれの時代に生きた人々も、我々と同じようにそれなりの世界観を持っていたはずです。しかし世界観の認識は、科学技術の発展と密接に関わっていますから、科学技術が進歩するに従い、徐々に人々の世界観も変わりました。
 もし江戸時代の人と会話することができれば、意外と現代に通じる知識を有していて感心する可能性もある一方で、おそらく宇宙観みたいな話しになると、我々現代人から見れば、驚くほど何も知らないように感じるでしょう。

 現代では常識的な知識が、少し時代を遡れば、想像すらできなかったことなんて、いくらでもありますよね。昔は、人間が住んでいる「地」の方が固定され、「天」の方が動いていると考えられていたわけですが、天文学と宇宙開発の進歩で、地球は丸くて、太陽のまわりをまわっていることは、今や誰でも知っています。昔は悪霊が引き起こしていると考えられていた病気も、現代では原因が判明して治療法が確立していたりします。

 時代の移り変わりとともに科学技術が発展すればするほど、人々は、それまでの世界観の訂正と修正を余儀なくされます。そして有史以来、この事実は、一度も消え去ることなく、現代に至るまで延々と続いています。つまり歴史上、「時代が変われば、過去の世界観は部分的にせよ否定され続け、少しずつながらも新しい世界観へと移行していく」ことが、ずっと繰り返されてきたことになります。細かい点でいえば、「昔の人の認識の方が結果的に正しかった」なんてこともあるかもしれませんが、「世界観」のような大枠では、常にあとの時代の方が正しい可能性の方が高いと思われます。

 さて、そこでみなさんに問います。現代は、科学技術が発展し尽くした終点でしょうか? もし現代がその終点にあるといえるのなら、これ以上、新たにわかることは何もないので、現代に生きる我々が認識している世界観こそ正しいといっても差し支えないかもしれません。でも、終点ではないのは明らかですよね。科学は、まだまだ途中の段階でしかありません。この先、10年くらいの近未来では大きな変化はないかもしれませんが、100年後、200年後になると、人々の世界観も大きく変わっている可能性が高いと考えられます。
 もし100年後の人と会話することができれば、その世界観の違いにきっと驚愕することでしょう。つまり、みなさんが今、認識している人間観、生命・生物観、自然観、宇宙観、死生観は、今後、訂正や修正がどんどんされて、100年後では違ったものになっている可能性の方が高いと見るべきです。もちろん、どんなに時代が変わっても、絶対に変わらない普遍的な真実もありますが、一方で認識を改めざるを得ないことも多いはずです。

 私が大学生だった30年前と比較しても、科学は大きく発展して、当時は想像もできないことが新たにわかったりしています。中には、これまでの世界観が大きく揺らぐほどの内容もあります。ということは、さらに30年後には、また別のことがわかったりして、まず間違いなく世界観を訂正・修正さぜるを得なくなっているだろうと容易に想像できます。これが100年後、200年後なら、なおさらでしょう。

 いくら我々が「科学技術が発展している現代に生きている」と胸を張っても、それは所詮、「過去の時代」との対比でしかなく、実は「真実の世界観」を知るために人類が続けている果てしない旅の、あくまで途中に過ぎないことに気づくべきですね。しかもその旅は、どこに終点があるかも判然とせず、もしかすると「真実の世界観」を知る前に人類が滅亡する可能性だってある…というくらいの、おそろしく長い長い時間を要する困難な旅の途中に我々はいるというわけです。人類は、実はまだ何も知らない。知っているのはごくごく一部にしか過ぎない井の中の蛙なのです。



 




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