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 週刊朝日/朝日新聞社 









 昔、我が家では朝日新聞だけでなく、新聞と一緒に週刊朝日も取っていた時期が長かった。そんなこともあって、本項でも取り上げた科学朝日の購読につながったわけだ。
 現在、そもそも週刊誌という類の媒体を買うことは一切ないので、もちろん週刊朝日も例外ではないが、今でも当時の号を一部保管している。それが、写真を掲載した1981年2月15日増刊号「日本人はどこから来たか」と1981年7月1日増刊号「視覚のパンチ! 見なれた世界のテクニック」の2冊。特に後者は、改めてページをめくっても、なかなか興味深い内容である。

 表紙写真とタイトルを見れば、想像が付くと思うが、当時としては最先端の画像合成技術を紹介しており、高校で写真部に在籍していた私としては興味津々に読んだことが思い出される。こんなテーマを週刊誌が、わざわざ増刊号で特集を組むなんて、今ではあり得ないかもしれない。
 表紙写真のような合成をどうやるか、カラーグラビアで紹介。まず最初に略して「ダイトラ」。正しくはダイトランス・ファー・ブリントという手作業で行う技法を取り上げていたが、一番目を惹いたのはその次。コンピューターによって合成するレスポンス300という装置が出て来て、当時は「ついに、こんなことも可能になったのか」といたく感動したものである。この装置は、イスラエル製で1台3億円。「日本に今4台しかない」…とある。いうまでもなく、現在では、これくらいのことはソフトさえあれば、一般的なPCでも余裕でできるわけで、40年の技術的進歩はスゴイな、と改めて思ってしまう。まあ、当たり前か。

 いや、それだけじゃない。記事に目を通すと、40年という月日を否が応でも認識せざるを得なかったりする。ひと昔の雑誌らしい、ちょっと細かすぎる文字はともかく、記事には次のような記述もあった。

 (モデルの女性の)○○ちゃんは、色が真っ黒。すこし焼きすぎていますね。お肌を整えましょう。それに、盲腸の傷跡が目立ちますね。これも消しましょう。アレッ、お腹にシミが、コレも消しちゃえ

 …とあったりする。今なら確実にアウトになりそうな記述には、苦笑するしかない。当時はこのくらいはOKだったのか、とちょっとビックリもした。
 とはいえ、昔の週刊朝日は、時々、こんなおもしろいテーマの増刊号を出していたんだよね。その企画自体はよかったと思う。写真好きの私としては、結構、刺激を受けた。

 ちなみに表紙写真と同じく、×=○ という輝く文字と女性モデルを合成した別カットが中面に見開きで載っていて「見破れるかな」のコピーが躍っているのだが、今見ると、結構、合成感があって、あまりリアルじゃない。どこがダメかというと、背景の水平線は,少しピンボケなのに、その上空に浮かぶように配置されている ×=○ の文字にはピッタリとピントが合っていて、その差が違和感につながっている。しかし女性モデルが胸の上に載せている週刊朝日の表紙は、実は撮影時には週刊新潮が載せてあり、掲載誌の表紙レイアウトを決定したあとに、掲載誌をすでに持っているかのように表紙部分だけ差し替えたらしいが、今見ても合成には見えないほどの出来映えである。




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